CROSS 第2話 『9番目の異次元ステーションでの災難』
第5章 犠牲
通信室は、すぐ見えてきた。どうやら、すでに全員、艦に収容さ
れたらしく、誰もいなかった。彼らは走りながら安堵した。
ガランッ!!!
大きな音とともに、すぐ横にあったドアから、突起状のツメを持
った悪魔がドアを突き破って飛び出てきた。分隊長を襲った悪魔で
あった。
その悪魔は、ちょうど目の前を走っていた隊員をつかんだ。
「うわ〜〜〜!!! 離せ!!!」
つかまれた隊員は情けなく叫んだ。もう1人の隊員が、助けに行こ
うとしたが、その前にその隊員は、光とともにその場から消えた。
転送されたのだ。少佐と椿が代わりに助けに行こうとしたが、彼ら
も光とともに転送された。
つかまれている隊員の絶叫が、ステーション中に響いていた。だ
が、その絶叫はいきなり途切れた……。
特務艦の転送室に、少佐と椿が光とともに転送されてきた。2人
は、悔しそうに顔を見合わせた。少佐が椿に何か問いかけようとし
たが、
「もう少しで助けられたのに!! 勝手に転送しやがって!!」
転送室中に怒声が響いた。驚いた少佐と椿が、怒声がした方を見
ると……、悪魔につかまった仲間を助けようとした隊員が、転送主
任のIや他の転送係員たちに、殴りかかろうとしていた。しかし、
その隊員は、焦っている転送係のすぐ近くまで来たところで、まだ
転送室にいた他の隊員たちに取り押さえられた。
その一部始終を、少佐と椿は無言で見ていた。
作品名:CROSS 第2話 『9番目の異次元ステーションでの災難』 作家名:やまさん