CROSS 第2話 『9番目の異次元ステーションでの災難』
……その「何か」の正体は、ここのクルーだった……。
あの通信の時は、音声のみだったので、そのクルーが通信のときのクルーと同じクルーだという証拠は無いが、まず間違いないだろう。
とにかく、ロッカーから飛び出てきたそのクルーは、少佐たちが銃口を向けたとき、即座に手を上げたが、すぐに味方だとわかったようだ。
「ちょっと待ってくれ! 俺は救助を求めたここのクルーだって!」
そのクルーは、銃口を向ける少佐に向かってそう言いながら、上
げていた両手をゆっくり下ろした。そのクルーの声は、まさしくあ
の通信の時のクルーであった。少佐も理解したようで、銃口を下げ、
部下たちにも銃口を下げさせた。
椿は、自分を驚かせたクルーをにらみながら、通路にいる隊員た
ちに指示をしに部屋を出て行った。落ち着いたところで、少佐がそ
のクルーに質問を始めた。
「……それじゃあ教えてくれ。……えーと、」
「少佐、私の名前は『ベシアー』です。階級は中尉で、この異次元
ステーション『DW9』で医療主任を任されています。我々の司
令官とは連絡が取れません……」
山口少佐が聞く前に、ベシアーが答えた。
「……じゃあ、ベシアー中尉。このステーションで、いったい何が
起きたんだ」
「あのときは、ステーション中がかなり混乱していましたので、あ
まり情報をつかむことができなかったんですが……。 私がつか
んだ情報によりますと、このステーションに突然、自己再生でき
る得体の知れない怪物たちが現れて、人を殺したり、その死体を
食ったりして暴れ始めたそうです……」
「混乱の中、人づてに聞いた話では、やつらは、『デモナータ』の
悪魔どもに間違いないらしいです……」
作品名:CROSS 第2話 『9番目の異次元ステーションでの災難』 作家名:やまさん