明日に向かって撃て!(終)
午後3時過ぎ。
途中、うどんを食べるのに時間がかかってしまった。やはり讃岐うどんには人気がある。しかも目の前でうどんを打ってくれる。
善通寺に到着すると、小沢さんに電話を入れた。
誰からも連絡を受けていない、と言う。
『絶対に妹のとこに行くはずですから、会わせないようにお願いしますね』
仕方なく、母娘が住むアパートの出入り口とそこに通じる道路が見渡せる所に車を置いて見張ることにした。
30分ほどそうしていると・・いや、ちょっと居眠りをしていたのだが、窓をのぞいている気配がした。警官だ。
「ここで何をしょーるんな。不審人物がおると通報を受けたんやけどなぁ」
「え、いえ、いえいえ不審者じゃないですよ。待ち合わせ、です」
ちぇっ、ドラマでこんな邪魔が入ってるんを見たことないぞ。
しかし考えてみると娘さんはまだ勤務時間中だろうし、交通手段はひとつだし、小沢さんがまだ着いていないのだとしたら駅で待っている方がいいだろうか。
シャーロックを乗せたまま車を駅の駐車場に置いて、改札の近くで待った。まさか無駄足じゃなかろうか、と思いながら。
電車がゆっくりと入ってきた。降りてきた人はまばらだ。
小沢さんはいた。しかし・・連れ? 少年が横に付いて歩いている。
改札を出てきたところで声をかけた。
「小沢さんですよね。私は娘さんから依頼を受けた探偵の小南です」
びっくり仰天といった表情で見やってから、小沢さんは口を開いた。
「知ってますよ、小南探偵事務所。時々散歩されてる姿を拝見しています。そうですか、娘が・・・」
「で、その子は?」
「ぼく安田悠馬いいます」
「国道沿いにファミレスがあったんですが、とりあえずそこへ行ってお話でもしましょうか」
悠馬は安田さんに視線を送った。
「おじさん、おなかすいた」
作品名:明日に向かって撃て!(終) 作家名:健忘真実