小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

明日に向かって撃て!(終)

INDEX|10ページ/36ページ|

次のページ前のページ
 

 塾から電話が掛かってきた時、鷹子は外出の支度をしている最中だった。
 梅田芸術劇場での公演、タカラヅカスペシャル〜明日に架ける夢〜 を友達と観に行く。12時開演なので軽く食事をしておこうと約束している。

「えっ? 悠馬ちゃん休んでる? いいえ、いつもどおりに家を出てますわよ」
 家から塾までの15分程度の道をたどったが、やはり塾にはいなかった。

 夫が経営する会社へ電話をした。
「きっと誘拐されたんよ。誘拐にちがいないわ! あなたすぐに帰ってきて。警察には私から電話します。身代金用意しとかないと!」

 犯人らしき者からの電話などなく、警察には本腰を入れた捜査はしてもらえそうにない。それでも付近を当たってもらった。
 駅で見かけたという人がいて、大阪駅方面の電車に乗ったことが分かった。

「ああ、悠馬ちゃん、塾のお勉強が遅れてしまう。ピアノのお稽古もあるというのに、もう」
「お前は悠馬の体のことより、そんなことの方が大事なのか!」
「悠馬ちゃんのことを思ってのことです! 1日の遅れを取り戻すのは大変なんですから。あなたは何にも分かってないくせに」


 大阪駅での窓口で、善通寺までの切符を買っていることが分かった。
 その時間帯、少年は年配の男性と楽しげに切符売り場に現れ、珍しげにあたりを見回していたという。
 特急券は買われなかったから快速電車で、乗車を楽しむのかもしれないですよ、と係員は言った。
 時間のたっぷりある人は、電車自体や景色などを楽しむ人が結構いるらしい。

「きっと騙されて連れまわされてるにちがいないわ。悠馬ちゃん、電車に乗ったことないのよ。なんとしても探し出して犯人を捕まえてちょうだい!」

 警察は鷹子の剣幕と、ちょっと知られた町の名士である安田という名前に押され、善通寺署に少年の写真を送り、見張りを依頼。