明日に向かって撃て!(終)
小南探偵事務所は相変わらずペットの捜索依頼が多かったが、暑い日日が続くとそれもなくなった。犬や猫も暑い時には活動せず、家の涼しい場所でじっとして寝そべっているらしい。
小南が助手のシャーロックと共に喫茶“憩い”から戻って来ると、入り口で女性が待っていた。
1Fの事務所で話を聞く。仕事の依頼が久々に入ったのである。
依頼人小沢さんの父耕作は、毎日この近くの公園で過ごしているのだが、なぜそうしているのかは聞き出せなかった。
今日は一旦出かけてしばらくすると戻ってきた。
着替えをし、銀行のキャッシュカードと何かしらの荷物を鞄に詰め、
高松に行く、と言って出ていった。
止める間もなかった、というのである。
香川県善通寺には母と妹、耕作にとっては別れた妻と娘がいるということだ。
お互い疎遠にはなっているが、妹の和代とは連絡を取り合っており、妹はまもなく結婚する。
父の耕作には知らせていないが、夫と話しているのを聞かれたのだと思う、
と小沢さんは説明した。
父が妹と会うのを阻止してほしい、というのが依頼内容である。
妹には父が出向いたことを知らせていない。
母の生家の近くで母と妹は暮らしているが、父はその住所までは知らないはずである。しかし捜せばすぐに見いだせる所に住んでいるとのこと。
こういう訳で、俺は実家にある親父の車を無断拝借して、善通寺へ向かった。
中国自動車道、山陽自動車道、明石海峡大橋を越えて道の駅あわじで休憩。
久々に海を眺めて気持ちが軽やかになった。
ああ、緑ちゃんが隣にいてくれたら・・最高だぜ!
シャーロックを連れ出して排泄させなければならない。味気ないことこの上なし、トホホ・・・
だが名物のたこ飯と生しらす丼に舌鼓を打つ。
これも経費に入れておこう。
神戸淡路鳴門自動車道で淡路島を縦断し鳴門海峡を渡る。
せっかくここまで来たのだから、少し観光しておこうか。
大鳴門橋の橋桁内に造られた海上遊歩道。
陸地から450mの所にある展望室のガラス床から、45m下に激しく渦巻く渦潮が見られた。ラッキーだ。干潮時とぴったしカンカン。
そして高松自動車道へ。
せっかく高松へ来たのだから、讃岐うどんは絶対に食べとかないと。
作品名:明日に向かって撃て!(終) 作家名:健忘真実