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明日に向かって撃て!(終)

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二人三脚


 耕作はあずま屋風建屋の中央に造られた腰かけに座って、パンくずを放っていた。

 高級住宅地の一角にある公園の周囲を緑豊かな木々が囲み、花壇にはヒマワリが背筋を伸ばして太陽に向かって立っている。
 赤や青い花も咲いているが名前を知らない。
 夏休みの午前中にもかかわらず、子供たちの歓声はない。姿さえもない。  
 シャーシャーシャーという耳をつんざくばかりの蝉の合唱があるだけだ。
 それと、クルックルッ、クゥクゥと喉を鳴らして集まってきた鳩の群れ。パンくずを放るたびにバタバタと低く飛び上がってすぐに着地をすると、頭を前後に振りながら歩いて寄って来る。

 袋に入ったパンくずがなくなると、耕作にはもうすることがない。
 ただボーッと坐って、人が時々公園の中を横切って行くのを眺めているだけである。
 お腹が空いてくると、コンビニで買っておいた菓子パンとぬるくなったコーヒー牛乳を、時間をかけてお腹に収めていく。
 それが終わると再びボーッと坐っている。同じ姿勢では疲れてくるので、時々横になる。
 本を持参することもあるが、ひなたでは日差しが強すぎて目が疲れ、日陰では暗くて読めない。
 曇りの日も雨の日も、日がな一日この公園で過ごしている。
 そんな毎日が、今日は途切れた。


「フーッ」と、ひとりの少年が隣の腰掛けに腰かけた。
 何が入っているのか、重そうな肩掛けカバンを横に置いた。
 おはよう、と声をかけると、
「おはようございます」と丁寧に頭を下げてくる。
が、声に張りがない。
 眠そうな目でちらっと耕作を見、周辺を歩いている鳩を眺めている。「ハーッ」とため息をまたひとつ。

「坊主、眠そうやな。暑うて眠れんかったか」
「いえ、エアコンが付いてますから」と言い、再びため息をつく。
「重そうなカバンやな。学校行く途中かいな」
「いえ、塾です。朝9時から夜6時まで塾があるんです」
「ほう、見たとこ小学生やが大変なんやな。何年生や」
「5年生です。塾から帰っても宿題があって、寝るんは1時ごろになるんです。ア〜ぁ、夏休みやというのに・・・どっか、遊びに行きたいなぁ〜」