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明日に向かって撃て!(終)

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 午前中に山道を歩きまわったが、予想通り何も分からなかった。そのまま公園に立ち寄ってシャーロックを受け取って帰ることにした。

「ありがとうございました。シャーロック、ご迷惑かけませんでしたか?」
「お疲れさんでしたな。その様子は成果なし、ってとこでんな」
「もう日が経ってますし、なんも分かりませんでしたわ。おらんようになった日に見かけた人もいてへんし、けったいなことです」

「それやけどなぁ、ここに来るスズメがさえずってたんやけど、3丁目のドーベルマンがおらんようになったし、1丁目のボルゾイも行方不明なんやて。変やと思わんか」
 さすがは小沢耕作さん。一日無下にボーッとしてるわけではない、というのが頼もしい。きっちりと耳を澄ませているのだ。年の甲というより、性格によるものだろう。

「それで思うんやが、今はもう見かけんけど、少し前まで犬の美容室、て書かれた車をよう見かけたんやが、知ってるか」
「僕も見ました。けど最近は流行ってますから」
「それやがな。犬泥棒とちゃうんかいな、と考えたわけやな」
「素晴らしい推理ですね」
「コナン君は新聞を読まへんみたいやけど、ブリーダーちゅうんがおって、珍しい犬を繁殖さして、たこうで売るんやな。頭数が少ないよって血縁が濃うなってくるさかい、病気で死にやすうなってきてるんやて。それでそういった犬が少ないんで、喉から手が出るほどに欲しいらしいわ」
「たいていの犬は家の中で飼われてますし、庭に出すんは昼間だけとゆうんがほとんどですわ。昼日中にどうやって大きな犬を連れ出すんですか。住宅街やゆうても人通りが結構ありますし。それこそ人目につきます。そんな目撃情報はなかったですよ」

「そやから犬の美容室、なんや。いくつかほんまの店はあるやろうけどな、そう思わせといて犬を盗み出す。誰も気にせえへんやろ。たとえ見てたとしても、認識してなかったら見てへんのと同じや。これを『注意の錯覚』ゆうんやな。学問としても立派に研究されとる事や」
「よくご存じで」
「無駄に時間過ごしてるわけやないからな」
「ふゥーん。もしそうやとしたら、そんな車が再び現れてくれんことには、犬の行方は分からんちゅうことですかねぇ」