明日に向かって撃て!(終)
八方ふさがり
車体に[犬の美容室]というシールを張った白いバンが、最近よく目に付くようになった。
室内で飼う犬が増えて、家族も同然。
子供が中学生・高校生ともなると相手にしてもらえなくなり、その代用として飼い始める人が多い。そういった人たちは大型犬を好む。子供が巣立ち夫婦ふたりの生活になった人たちは中型犬から、老夫婦の場合小型犬を好む傾向にあるらしい。
老夫婦にとっては、愛犬を駅前の美容室まで連れて行くのが大儀だ、と思う人が多い。
大型犬の場合は、シャンプーをした帰り道で地面に寝転がられて土やごみで汚れてしまったり、植え込みに突っ込んで草まみれになられたのでは、腹立たしいことこの上ない。
よって、少しの間だけでもシャンプーしたてのまま過ごせるように、車での送迎を考えるらしい。
シャーロックは、風呂場でシャンプーをする。小型犬なので洗うのは楽だ。
さて、そのバンである。
散歩をしていると再び出会った。町内をぐるぐる回っているらしい。目的の家が見つからないのだろうか。ちょいと中を見ると、中年の男女が乗っていた。視線が合うとすかさずそらされた。
作品名:明日に向かって撃て!(終) 作家名:健忘真実