明日に向かって撃て!(終)
「あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます。今年もよろしゅうにィ」
「こちらこそ」
俺の念願だった。
今俺は、晴れ着を着た緑ちゃんと初詣に来ている。
箕面市瀧安寺は役行者が開き、日本四弁財天のひとつとされるご本尊を持つ。日本の富くじ発祥の地でもある。駅から箕面ノ滝に向かう道を15分ほど歩くと、箕面山を背景に箕面川をまたいでそれはある。
今日は富くじがある。大きな木箱に入れられた木札を、蓋に空いた穴から先が尖った長い木で突き刺すのだ。
お参りした後で富くじに挑戦。
おっ、もんちゃんせんべいをゲット。ここは野生猿の繁殖地である。それの愛称として付けられた名前のせんべい。もみじまんじゅうも名物である。それと紅葉のてんぷらは、1年以上塩漬けした紅葉の色づいた葉を、砂糖とごまの入った衣を付けてパリッと揚げたもの。香ばしくておいしい。
ここでは野生猿とはしょっちゅう出くわす。油断していると飲んでる最中の缶ジュースを奪われることがある。
「緑ちゃんは何をお願いしたんや?」
「そんなん教えたらご利益(りやく)なくなるやろ」
話は途切れがちである。
俺は隣を歩く緑ちゃんを、まじまじとはまだ見ていない。
まぶしくて、見るのが照れくさいこともあって、まだ見ていないのである。前を向いたまま眼玉を右側に寄せると、肩のあたりが目に入ってくる。そこまで、だ。
他の女性の姿は、なにもはばかることなく見ることができるのに。
作品名:明日に向かって撃て!(終) 作家名:健忘真実