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明日に向かって撃て!(終)

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 事務所の机の上に袋の中身を出してもらった。いちごショートケーキの2個入りパックがただひとつ。
 赤い帽子と白い髭を取った。

「このケーキの代金、はろてませんね」
 はい、消え入りそうな声で答えると、女は子供を見やって、うなだれた。
「すみません」
「なぁ〜んや、おっちゃん、サンタさんとちごたんか・・・おかぁちゃん、なんであやまってんのん?」
「え? ちょっとな」
 男の子はポケットから何かのフィギュアを取り出すといじり始め、俺の方に突き出した。

「♪セブンセブンセブン、テペト星人をやっつけろ! 立てウルトラセブン! 我らのヒーロー悪い奴をやっつけるんや! シュワッチ!」
「ワー、やられた〜、といきたいとこやけど・・ぼうず、いくつや?」
「ぼうずやない! 浩や」
「浩、ウルトラセブン、って古いもん持ってるんやな」
「お父ちゃんにもろてん」
「今時もう売ってへんやろに」
「お父ちゃんの机のひきだしから、もろてん」
「そりゃ、黙ってくすねたってことやないんか」
「どうせお父ちゃん、もうおらんさかい」
「おらんのんか、悪いこと聞いたな」
「お父ちゃんなぁ、女の人とどっかに行ってしもてん」
「これ浩! 余計なことゆうんやない!」
 母は息子を睨みつけた。

「しやから、もうサンタクロース、こえへんのんや」
 泣き出しそうな声になっている。
「すみませんでした。これお返しします。どうか見逃してもらえませんやろか。もう二度としません」
「(グスン)おかぁちゃん・・おっちゃんすみませんでした。おかぁちゃんゆるしてください。二度とせんように見はっときますよって」
 浩は古びた紺色のダウンの袖で涙と鼻水を拭いた。