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明日に向かって撃て!(終)

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「おふたりはお知り合いのようですね」
 堂本めぐみをひとり掛け椅子に座らせ、その向かいのソファに山口安美さんと並んで座った。山口さんは社内結婚をし、堂本と安美さんは同期だったという。

「ではこのバッグの中身を確認させてもらいます」
 茶色のバッグの中身をテーブルの上に広げた。
 化粧ポーチ、財布、携帯電話、塩飴の袋と包み紙、ハンカチ、ティッシュ、タンポン(オヨッ)、山口さん宛ての封書が2通、そしてそれをポストの中から拾い上げたと思われる、先端が大きく渦巻き状になっている針がね。
 めぐみはすかさず封書を取り上げ、安美さんに投げつけた。

「こんなもん持って帰れ! この泥棒猫」
「なんで私が泥棒猫なんよ! あんたこそ正真正銘の泥棒やないの」
「うちの修さんを盗んどいてなにぬかすんじゃ、この弩ブス! ブスブス! うちが修さんの妻の座に納まるはずやったんや、それを。お前らがくっついたおかげで会社辞める羽目になったんやで、この糞女のどこがええんや、うちの方がずっと美人で器量良しやのにクヤシィーッ」
と握りこぶしを打ち震わせている。

 安美さんは開き気味の鼻の穴をさらに広げた。
「違うよ。彼、あんたから逃げてたやない。結婚する、なんて勝手に言いふらしてて、あなたのその性格にはほとほと手を焼いてるって。仕事の部下と違うんやったら近づきたくもないって」
 キ――ッ、めぐみは立ち上がってテーブルに足をつき、安美さんに掴みかかろうとしたところを押さえつけた。
 ああ、俺もこんな場面に居合わせるのは苦痛だ。

「まあまあ落ち着いて。山口さんどうされますか」
「そうやねぇ。もう2度と嫌がらせはせんといてちょうだい。今度何かあったら警察に突き出すから。分かったね!」
 フンッ、とテーブルの上に広げた物をバッグに収めためぐみ。
「帰る。もう2度とけぇへんわ。はよ別れなはれ」
 俺はサッと立ち上がってドアを開けて押さえた。蹴られたら壊れると思ったのだ。

 めぐみはドアを出るときに、俺のシャツの胸ポケットに何かを押しこんだ。
 何かと思って取り出すと・・・タンポンだ。山口さんに気まずいと思い、あわてて胸ポケットに戻した。