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明日に向かって撃て!(終)

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 一件落着ではあるが、疲れを感じた俺は喫茶“憩い”へ行った。シャーロックももちろん一緒に。
 緑ちゃんの笑顔を見れば疲れなんて吹き飛ぶさ。

 コーヒーを運んできた緑ちゃんは、俺のシャツの胸ポケットに目を止めた。
「何が入ってるの?」
という問いかけに、俺はハッとした。忘れていた! 思わずポケットを押さえた。
「なんでもないよ」
 余計に好奇心を刺激したらしい。緑ちゃんは胸ポケットに手を突っ込んできた。
 そして、
「なんやのん、これ。なんでコナンさんが持ってるのん」
「いや、なに・・・その」
 いざとなると言葉が出てこないものである。

 それを俺のポケットに戻して、
「緑ちゃん、緑ちゃんって、私に気があるように振舞っとって、映画にも付き合ったげたのに、そうか、うちは誰かさんの身代わりやったんやね。その大事な彼女のところに……」
 俺はもう聞いていなかった。
 ただ、ここで一発決めておかないとこれからのこともある。

 四の五の抜かすな、
と言ってほっぺのひとつぐらい、かる〜く張っておこう。

 パシーン!
 
 地球の自転が止まって無音の世界となり、すべての動きが静止した。
 カウンターの中のマスター、テーブルに座っている客たちは振り向いて動きを止め、きらめく好奇の視線を俺たちに注いでいる。
 他人に起こっているトラブルは、実に楽しいものなのだろう。
 シャーロックだけがテーブルの下から、悲しげな目をして見ていた。尻尾を腹の下にしまい込んで。

「お金はいらんから、帰って!」

 プライドを打ち砕かれてしまった俺は、緑ちゃんに思いっきりぶたれたほっぺをなでさすりながら、しょんぼりと外に出た。


                     2011.11.28