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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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旅路の果てのケアハウス

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「ハイ、息子さんご夫婦、入ってもらいます」

 その声と共に入って来た息子夫婦は部屋の豪華さに息をのんだ。

 静かなクラッシックの流れる白い部屋。
 窓際には観葉植物。
 壁には80型フルハイビジョンテレビが掛っている。
 電力不足のこの時代に、明るすぎる照明器具もついていた。

「こりゃあ、親父、すごい所に住んでるんだな」
「ほんとね。石油王になったみたいなというのはウソじゃないわね」

 息子夫婦が口々に叫んだ。

「違う。普段はこんな部屋じゃない!」
 俺が叫ぶと同時に音楽も大きくなった。

 くそ、なんとか真実を告げなければ。
 俺はあせった。しかし・・・。


「息子さんは、しばらくここに滞在されますか?」
 という事務方の問いに、

「いえ、すぐに帰ります。近くの温泉に部屋をとってますので」
 と、答えたのは嫁。

「海洋釣り堀の予約も取ってありますので」
 と言ったのは息子だった。

 そうだ、息子夫婦はこんなやつらだった。
 考えてみれば、ここを勝手に決めて来たのも、こやつらだったのだ。


「それにしてもここは本当に良いところね」
 嫁がちょっと羨ましそうに言った。

「ぼくらも65歳になったら入れるように今から予約しておこうか」
 
「そうね。見て、お父さんも笑ってる」

 俺はここぞとばかりに満面の笑みを返した。

 こんなところに入れやがって、お前達もここに入って実態を知るがいい。
 俺は心の中でほくそ笑んだ。


    (おしまい)