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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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旅路の果てのケアハウス

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関西州公認のメガ・ケアハウス、剣が崎・スィートホームは日本海に面した海岸沿いにある。
 
 ここは元々、日本エネルギー開発が、MOX燃料型の原子炉を建設する目的で確保した土地だったが、2011年の原発事故によって売りに出されたものだった。
 
 面積は200万平方m(TDLは51万平方m)。この中に約3万人の老人が暮らしている。
 
 パンフレットによると敷地の中には病院やコンビニ、美容院に映画館まであるということだが、
ことに寝たきりになった人が利用する「さざなみハウス」は、いたれり尽くせり。
 
 介護のエキスパート達が、一人の利用者を数人がかりで介護する為、まるで石油王になったような錯覚さえ覚えると言う触れこみである。
 
 が、その実態は・・・。

「ハイ、権蔵(ごんぞう)さん、おトイレ入ります」

 事務的な介護主任の指示で、俺は台座に運ばれた。
 トイレといっても実態は腸洗浄。自動的に体内の老廃物を排除されるだけの話だ。

 それが終わると、こんどは入浴。
 しかし、ここも自動化されていて、俺が載せられたのはベルトコンベアーの上。
 敬老、楽々入浴装置などというが、別名・老人洗い機だ。
 見ると107号室の富村さんや201号室の梅木さん、58号室の杉子バアさんも乗せられていた。

「権蔵さん、今日はスペシャルメニューでやってちょうだい。息子さんが来られるらしいのよ」
 事務方の看護士がいらぬ事を言った。

 俺は顔の上に小型酸素マスク付きプロテクターを装着され、洗浄マシンBの方に誘導される。

 「Bは、Bはやめてくれ!」

 俺は断固抗議したが、介護師の耳には届かなかった。

 ウィ〜ン、クワックワックワ〜ン。

 洗車マシーンを思わせる。巨大なモップが俺を包み、洗浄液が四方八方からかけられる。
 このケアハウスが清潔さを売りにしているのは嘘ではなかったが、この扱いはひどかった。

「ヒェ〜、ヒェッヒェッヒェ!」
 機械の動きと共に発せられるその声は、俺が出したものか、それとも隣で洗われているジイさんのものかは分からなかった。

 とにかくテカテカに磨かれた俺は、自動パッケージマシンでパジャマを着せられ、
 天井に張られた誘導レールにぶら下げられたカゴに乗り、
 特別室のベッドの上にポトンと落とされた。