看護師の不思議な体験談 其の十八 『看護士のM君』
ピーッ!ピーッ!ピーッ!
火災警報器のアラームが鳴り始めた。結構大きな音なので、慌ててスイッチを押して、とりあえずアラームを止める。液晶パネルを見ると、個室から火災のマークが表示されていた。
時々、こっそりとタバコを吸う患者様もいて、火災警報器が鳴る事が過去にあった。
しかし今回は…。
「誰も使ってない部屋っすよね…」
「あ、M君」
頭の上から声がし、振り返るとM君が眉をしかめている。
「とりあえず見に行こ。ほら、懐中電灯。」
そう言い、懐中電灯を差し出す。
「えっ?空室だから確認しなくてもいいんじゃないすか?」
M君は無意識に懐中電灯を受け取りながら、ぼやいている。
「空室だから余計怖いでしょ。不審者がいたらどうすんの。」
ほら、と急かしてM君の大きな背中を押す。
『 409号室 』
「前から思ってたんですけど、あんまり良い部屋番号じゃないっすよね。」
「いいから、さっさと入って確認!」
いつもは機敏なM君がモタモタと中々部屋に入らない。
(まさかとは思うけど…)
「…もしかして、怖いの?」
ギクッと肩を揺らすM君。
「そんなわけ…」
「それなら早く言ってくれればいいのに。」
「違います!」
M君はムキになってそう言い返してきた。
(別に恥ずかしい事じゃないのになぁ…。)
小さくため息をつく。
空室のため鍵をガチャリと開け、扉を開く。
ヒンヤリとした空気。誰も居る気配はない。
M君は懐中電灯を照らし、ゆっくり中へ進む。
(電気つけたらいいのに)
そう思い、小さな声で話しかけた。
「あのさぁ…。」
「わぁっ!」
「…」
M君の驚き様に、驚く私。
「す、すいません!びっくりして」
(こりゃ、結構な怖がりだな…。)
(あ、だから夜勤のない手術室希望してたんだな。)
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十八 『看護士のM君』 作家名:柊 恵二