看護師の不思議な体験談 其の十八 『看護士のM君』
もちろん、男性がスタッフとして病棟に入るのは助かる。
ただ、手術室しか経験がないし、3年目ってちょっと調子に乗り始める時期だし…、正直、見かけ倒しなのではと個人的に思っていた。
しかし、予想に反して、意外にテキパキと働くM君。
みんなが嫌がる役回りもさらっとやってのける。
苦情を常に訴えてくるおばあちゃんや、大きな声を出して脅迫じみた暴言を吐く中年男性、などなど、困った患者様の対処はたいがいM君の役割だった。
鬼のような表情で苦情を言いに来るおばあちゃんなんかは、M君が現れた途端、頬を染めて目を輝かせる。恋する乙女みたいな感じ。
(なんか、ずるいな…)
(男性だからっていう理由もあるけど…)
今まで私たちが四苦八苦していたクレーム対応を、難なく片付けていくM君。
ありがたいと思いつつも、その技術に若干嫉妬。
そんなM君が初めての夜勤をすることに。
一緒に勤務をすることになった私。
「よろしくね。M君。」
「はい、よろしくお願いします。夜勤自体初めてなので。」
やや緊張気味のM君。
「手術室の時は?待機があったでしょう。」
「夜に呼ばれたことがまだなくて。頑張ります!」
ニカッと笑う顔は、まあ、可愛らしくて。
(そういやぁ、新人の子らがキャアキャア言ってたな…)
後輩から見たら、格好良くて頼もしい先輩なんだろう。
初夜勤はどうなるかと思ったが、なんとか順調に業務も進み、消灯時間も過ぎた。
そんな時…。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十八 『看護士のM君』 作家名:柊 恵二