circulation【2話】橙色の夕日
「あんたは昨日ほとんど役に立たなかったんだから。今日はその分も頑張りなさいよね」
デュナの厳しい言葉にスカイが振り返って反論する。
「昨日だって決死のダイビングしてただろ!? 三階から飛び降りろっつったの誰だよ!」
「あんたがもっと早く目覚めて、二人を連れて降りて来ればよかっただけでしょ」
「俺は睡眠薬を致死量飲まされてたんだぞ!?」
「飲まされてたんじゃなくて、自分から喜んで飲んでたんでしょ。
まったく、食い意地が張ってるんだから」
「ねーちゃんだって自分から飲んでたじゃねーか! 自分の事棚に上げて……」
このままではまた、結果の見えている無意味な姉弟喧嘩がはじまってしまう。
「ほらほら、スカイ、そろそろ行こ? フィーメリアさん助けなきゃ」
「お、おう。そうだな……」
フィーメリアさんの名前に、本来の目的を取り戻したのか、スカイが前に向き直った。
「先頭ー、しっかりしなさいよー」
後ろからデュナの声が飛ぶ。
「分かってるよ!!」
あんまり遺跡内で大きな声は出さないほうがいいと思うんだけどなぁ。
崩れてきても、デュナは障壁を張れないわけだし……。
なんだか、先行きが、ほんのちょっとだけ不安になってきた。
作品名:circulation【2話】橙色の夕日 作家名:弓屋 晶都