星に願いを
コイツはいつもそうだ。重要な最終決定を俺に委ねるクセがある。
進学する高校だって最後は俺が決めた。
「いや、だから、お前は占いだけで告白を決めたわけじゃないだろ? 最後の一歩を踏み出すきっかけが欲しかったんだ。それがたまたま今日の星占いだったというだけの話だよ」
「じゃあ、告白してもいいの?」
「ああ、やりたいようにすればいいと思うよ」
俺の言葉を聞いた吉野の顔がパアッと明るくなり、凄まじい勢いで席を立った。
「じゃあッ、わたし 行ってくるッ!」
猛ダッシュで学食の外へと走り去っていく吉野香織。その迷いのない後ろ姿は清々しさすら感じる。
ここでアイツから「好きだよ」とか言われるような展開は期待していなかったから、落胆も驚きも無い。いつの間にかトンカツ定食がきれいに平らげられていたのには少々驚かされたけど。
たぶん、吉野が告白しようとしているのはバスケ部キャプテンのサワヤカ王子。
アイツは熱狂的なファンだけど、向こうからしてみれば数え切れないほどのファンの中の一人に過ぎない。特別な接点も無く、冷静に考えれば告白が成功する確率はゼロに近い。さらに言えば、心の支えになっている星占いも味方はしてくれない。
なぜならば、吉野は乙女座ではないから。