星に願いを
「でも、個人的に手相を見たり水晶を覗いたりするわけじゃなくて、世の中の人間全てを星座の数で分けて運勢を決めるんだろ? そんなの どう考えても理屈に合わない」
「理屈じゃないのよ、占いはッ! 貴志だって 自分の運勢とか気になるでしょ?」
「ああ、気になるね。だから、なるべく見ないようにしている。『今日、あなたは交通事故で死ぬでしょう』とか言われたら気分悪いからな」
「そんな占いあるわけないじゃん。どんだけネガティブなんだよ」
「この前『今日はケアレスミスをしやすいから注意』とか言われたけど、そんなのいつも注意してるってんだよ。これで実際にミスをしたら占い通りだし、ミスしなかったら占いのおかげで注意したからってことになるんだろ?」
「う〜ん……まあ、そうかもね」
「そんなもんなんだよ。当たるも八卦、当たらぬも八卦。それを生かすも殺すも本人次第。水瓶座の占いだって片思いが終わるってだけだろ? 失恋するとは言ってない。両思いになるかも知れないんだ」
「あっ、そっか。あとで奈緒子ちゃんに教えてあげよ」
「いや、沢田はこれをきっかけにして諦めた方がいいような気もするけどな」
「ダメだよッ! 奈緒子ちゃんは真剣なんだよッ」
さっきは他人の不幸を笑顔で話していたくせに、今度は俺を責めるような目つきで叫んでいる。どちらの感情もコイツの中では矛盾なく存在しているんだ。
「本当に真剣だったら占いくらいで諦めないだろ? 占いだけで自分の行動を決定するなんていうのは愚かだと思うね」
「……おろか?」
「そう、愚か」
「……」
分かりやす過ぎるほどにショボくれた吉野が味噌汁をズズッとすする。
「告白は……しない方がいいってこと?」