星に願いを
「なんだ、教師が相手なのか」
向かい側の席に座り直した吉野が俺の言葉にコクンと大きく頷く。
「そうなんだよぉ。禁断の恋ってヤツだね」
「黒岩って確か結婚してなかったか?」
「うんッ、禁断性がさらに倍! って感じだよねえ」
ウットリとした口調で答えながら白米をかきこむ姿に、(器用なものだな)とちょっと感心してしまう。
「バカバカしい、運勢とか気にする以前の問題じゃねーか」
「分かってないねえ 貴志は。女の子がずっと心に抱いていた想いが今日で終わっちゃうんだよ? これが悲劇でなくて なんだと言うの?」
「そのわりには、ここに来た時のお前は満面の笑顔だったけど?」
「ああ、それはねッ、おとめ座の恋愛運が最高だったからなんだよ! 『今日告白すればハッピーエンドを迎えられそう』だってさあ!!」
ブンブンと箸を振り回しながら喜びを表現する吉野。
箸に付いていたご飯粒が周囲に飛び散っていくのを眺めながら、俺は溜息をつく。
「お前は小学生か」
「まあ、いいじゃん。今日はおめでたい日なんだし」
「おめでたいのはお前だけだ」
俺に叱られた吉野は箸を口に咥えてご飯粒を始末した。
「ねえ、どう思う? こんな運勢の日をただボケ〜と過ごして終わらせるわけにはいかないでしょ?!」
「それって朝のテレビでやってる星占いだろ? あんなもん信じてんのか?」
「あの占いをやってる法条院美麗先生は超有名な占い師なんだよッ! 他のチャンネルの占いとは格が違うんだッ」
吉野はそう力説すると、トンカツを一切れパクついた。