星に願いを
「いやあ、わたし みずがめ座じゃなくて良かったなあッ」
ドカンとトンカツ定食をテーブルに置きながら吉野香織がデカい独り言を放つ。
俺は学食の片隅でクラスメイトの友人と昼食の時間をノンビリと過ごそうと思っていたのだが、当たり前のように俺の向かい側に座った吉野を見て、隣に座っていた彼は俺を置き去りにして少し離れた席へと移動してしまった。
「今日の みずがめ座の恋愛運は最悪なんだよッ。『ずっと心に秘めていた片思いが終わりそう』だって! もう、奈緒子ちゃん泣いちゃってさあ」
こちらの都合はお構いなしに話し始める吉野。
「沢田って片思いしてたのか?」
俺はスパゲティを食べる手を止めて、諦めの境地でコイツの話に付き合うことにした。
「そうだよ。有名じゃん」
「知らねーよ」
「え〜?! ウチのクラスでトップレベルの秘密の恋だよッ」
「秘密の恋が有名じゃマズいだろ。その相手ってのは誰なんだ?」
問いに答えるために吉野が身を乗り出して俺の眼前まで顔を近づけた。周囲の者から見たら恋人同士がイチャついているように見えているかも知れない。
俺達は幼稚園から高校までずっと一緒の幼なじみだ。何の気兼ねもなく話せる間柄なので一部のクラスメイトからも恋人と思われているみたいだが、少なくともコイツは全然そういう意識は持っていない。まあ、俗に言う友達以上恋人未満の関係という感じか。
「数学の黒岩先生」
俺の耳元で吉野がボソリと告げる。“秘密の恋”なので一応コイツも少しは気を使っているらしい。耳を撫でる吐息がこそばゆかったが、表情には出さないようにする。
ドカンとトンカツ定食をテーブルに置きながら吉野香織がデカい独り言を放つ。
俺は学食の片隅でクラスメイトの友人と昼食の時間をノンビリと過ごそうと思っていたのだが、当たり前のように俺の向かい側に座った吉野を見て、隣に座っていた彼は俺を置き去りにして少し離れた席へと移動してしまった。
「今日の みずがめ座の恋愛運は最悪なんだよッ。『ずっと心に秘めていた片思いが終わりそう』だって! もう、奈緒子ちゃん泣いちゃってさあ」
こちらの都合はお構いなしに話し始める吉野。
「沢田って片思いしてたのか?」
俺はスパゲティを食べる手を止めて、諦めの境地でコイツの話に付き合うことにした。
「そうだよ。有名じゃん」
「知らねーよ」
「え〜?! ウチのクラスでトップレベルの秘密の恋だよッ」
「秘密の恋が有名じゃマズいだろ。その相手ってのは誰なんだ?」
問いに答えるために吉野が身を乗り出して俺の眼前まで顔を近づけた。周囲の者から見たら恋人同士がイチャついているように見えているかも知れない。
俺達は幼稚園から高校までずっと一緒の幼なじみだ。何の気兼ねもなく話せる間柄なので一部のクラスメイトからも恋人と思われているみたいだが、少なくともコイツは全然そういう意識は持っていない。まあ、俗に言う友達以上恋人未満の関係という感じか。
「数学の黒岩先生」
俺の耳元で吉野がボソリと告げる。“秘密の恋”なので一応コイツも少しは気を使っているらしい。耳を撫でる吐息がこそばゆかったが、表情には出さないようにする。