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ラベンダー
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銀髪のアルシェ(外伝)~紅い目の悪魔Ⅱ

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「…これからも、ずっとたっちゃんと遊んであげてくれる?…お姉ちゃん…ここには一緒にいられないんだ。」
「もちろんっ!!」

海斗が言った。天使アルシェが、海斗の頭を撫でた。

「たっちゃんが、生まれ変われるまで、僕も生まれ変わらないでいるよ!」
「…生まれ変わる?」

綾子が言った。

「うん!たっちゃんね!お姉ちゃんの子どもに生まれ変わりたいんだって!!ねったっちゃん!」

海斗が赤子にそう言うと、赤子は「あーあー」と言って、綾子の頬に手を這わせた。

「!!…私の…子に…?」
「だから、お姉ちゃん、絶対に子ども産まなくちゃだめだよ!たっちゃん、生まれ変われなくなっちゃう。」
「…うん…うん!…私…たっちゃんを大事にしてくれるいい人探して…たっちゃんを産むわ。」

そういう綾子に、アルシェが言った。

「…じゃぁ…自分が家族を殺したなんて、もう言わないね?」

綾子は、目を見張ってアルシェを見た。

「…殺してもいないのに殺したなんて言っちゃいけない。…元の世界に戻ったら、ちゃんと刑事さんに本当のことを言うんだ。」

綾子は下を向いた。

「でも…でも…一旦殺したって言っちゃったのを、やっぱり殺してません…なんて…信じてくれるかしら。」
「大丈夫。そこは任せてくれ。」
「!」

綾子はアルシェを見て、うなずいた。

……

綾子はアルシェに横抱きにされ、空を飛んだ。
弟を抱き上げた海斗が、手を振って見送っている。

「たっちゃん!元気でね!絶対にたっちゃん産むからね!海斗君よろしくね!」

綾子はそう言いながら、海斗と弟に手を振った。

「任せて、お姉ちゃん!ばいばいっ!」

海斗が弟の手を取って、手を振らせた。
弟が「あーあー」と叫んでいる。綾子はまた涙が溢れ、アルシェの首にしがみついて泣いた。

「…絶対に…絶対に産むからね。」

綾子は何度も言った。

……

綾子ははっと目を覚ました。
そして飛び起きた。

「…夢…?」

そう呟いて、ふと自分が寝ていたベッドを見た。
枕の横に、大きな白い羽が1本落ちていた。
綾子はその羽をそっと手に取り、見つめた。

天使「アルシェ」のことを思い出した。

……

「ここ引っ張って…」

冥界から留置所に戻った綾子に、アルシェが羽を自分に向けて言った。

「1本抜いて。」
「え?大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。」

綾子はアルシェに言われるまま、羽を1本だけ引っ張った。

「いててててて!」

アルシェが言った。綾子は慌てて手を引っ込めた。

「大丈夫!大丈夫だから、早く抜いてっ!!」

アルシェが涙目になりながらそう言うので、綾子は「ごめんね」と言いながら、羽を1本抜き取った。
アルシェは抜き取られたところを手でさすりながら「これでよし」と言った。

「その羽を服の中に入れて、隠しといて。…で、明日、能田刑事さんに正直に言うんだよ。その羽の力できっと信じてもらえるから。」
「うん!…ありがとう…アルシェ。」
「どういたまして!」

その砕けた答えに、綾子は思わず吹き出した。

…翌日、綾子は能田に本当のことを言った。そしてアルシェの言葉どおり、無罪放免となった。

「…この羽…宝物にしよう…」

綾子は、家に帰ってから羽を胸元から取り出し、アルシェのことを思い出しながら呟いた。

……

「地獄へようこそ」

大悪魔(アークデビル)「ザリアベル」が、綾子の両親に言った。目は燃えるように紅く、両頬には長短2本ずつ傷がある。
両親は、お互いの手を握り合いながら震えている。父親が言った。

「どうしてこんなところに…」
「子殺しの罪だ。まさか天国に行けるとは思うまい?」
「こ、殺したのは、こいつだ!俺は」
「指示したのは、お前だろう!」

ザリアベルが父親に怒鳴り付けた。

「手にかけなくても同罪だ。…抵抗できない赤ん坊を殺すなんて、お前達は悪魔以下だ!」

両親は震えて何も言えなかった。

「だからお前達には…抵抗できない状態で責め苦を受けてもらう。」

ザリアベルが指をならした。
両親の後ろに柱が地下から出現し、その柱から太い蔓(つる)が伸びた。そして、逃げようとした両親の身体に絡り、両親はそれぞれ柱にくくりつけられた。
両親は悲鳴を上げて、もがいている。

「先ずは火責めから。」

ザリアベルが指を鳴らすと、炎が2本の柱を取り囲んだ。

「やめてくれ!助けてくれ!」

父親の声もむなしく火は柱を覆った。両親の悲鳴が上がった。

「…まだまだはじまったばかりだぞ。後に水責め、針責め…ゴマンと責め苦はある。…死ぬまでな…。…あ、そうか…お前達はこれ以上死ねないんだったな。」

ザリアベルはそう言って笑いながら、姿を消した。

…後には、両親の悲鳴が響いていた。

……

「大天使(アークエンジェル)様がびっくりしてたよ。大悪魔(アークデビル)のザリアベルが赤ちゃん抱いて、いきなり目の前に現れたもんだから…。」

天使「アルシェ」の人間形「浅野俊介」が、自分の前で、圭一の作った麻婆豆腐を美味しそうに食べているザリアベルを見ながら言った。圭一もアルシェの横でザリアベルを見ながら言った。

「母親が、赤ちゃんを一緒に地獄へ連れていこうとしたんだそうですね。」

浅野がうなずいて言った。

「あの母親は、子どもは自分と一緒にいた方が幸せだと思い込んでたんだ。それは単なる母親のエゴなんだが…」
「だから自分の子を殺すなんてことできたんだ…。」

圭一が悲しそうに言った。

「ザリアベルがあんなに怒ったのは、海斗君の時以来じゃないか?」

浅野がそう言ったが、ザリアベルはなんの反応も見せず、圭一に「おかわり」と空の皿を差し出した。

「はい!」

圭一は嬉しそうに皿を受け取り、立ち上がった。

「ザリアベル、辛いのもOKなんだ。圭一君のは結構辛めなのに…。」

辛いのが苦手なアルシェが感心したように言った。

「美味い。」

ザリアベルはそう言いながら、バケットをかじった。

「麻婆豆腐とバケットが合うなんて、思いつかなかったなぁ…」

アルシェが更に感心している。

「はい、ザリアベルさん」

圭一がザリアベルの前に皿を置いて言った。

「ありがとう。」

ザリアベルはそう言うと、また食べ始めた。

「あ、そうだ。ザリアベル。」

浅野がザリアベルに言った。

「今度、イリュージョンショーをするんですが、一緒に出演してもらえませんか?」
「!?」

ザリアベルの動きが固まった。浅野が続けた。

「日本公演だけでいいので。」
「…どうして俺が…」
「うちと提携して欲しいんですよ。それで「ノイツ・クロイツ」という名前で日本国籍を取って欲しいんです。」
「!…だから、どうして俺がそんなことまで…!」
「その悪魔のままでは、いろいろと不便が出るからですよ。車も運転できないし、外を歩いたら、職務質問受けるし。」
「…国籍があっても、職質は受けるだろう。」
「…ねぇ…ザリアベルさん…」

圭一が体をザリアベルの方に乗り出して言った。

「…ザリアベルさん…人間形になれないんですか?クロイツさんだった頃のお姿とかに…」