キミの写真
原因の分からない身体の不調を抱えたまま俺が受け持っているクラスに向かう。靴を履き替え、職員室に寄って必要なものを持つ。
急がなければホームルームが始まってしまう。担任が遅刻だなんて、ひかるに何を言われるか分かったもんじゃない。
……まあ実際のところ。あいつらは受験も終わり、残すイベントは卒業式のみ。あまり根詰める必要はないのだけれど。
手には出席簿。向かうは三年生の教室。一階からそこまで上がるのは体調が良い時でも億劫だ。
階段を上がりながら、思う。やはり体調が優れないらしい。一段上がるごとに肺に鉛でも入れられているかのように体が重くなる。
……気持ち悪い。目眩がして、吐き気がする。動悸は激しいし、頭痛はするし、目の前が変な色に染まっていく。
――まずい。昔、同じような状態に陥ったことがある。脱水症状になった時だ。
足元が覚束ない。二階と三階の踊り場で膝が抜けるようにして倒れてしまう。
……あー、まず。真面目にヤバいぞ、これ。
最後の最後、意識を手放す瞬間。
――ひかるの声が、聞こえた気がする。
そんなことを思って、俺は意識を手放した―――。