キミの写真
朝、教師の俺は校門に立ち、挨拶をする。一人一人におはよう! の挨拶。なんて無意味な行為だろう。
自分が高校生だった頃も同じ事を思った。誰も聞いちゃいないのに、返事もしないのによくやるな、と。
正直、挨拶をする側としては悲しい。自分の声が誰にも届いていないようで悲しい。
「おはよう!」
俺は自身の虚しさ、悲しさを吹き飛ばすように、大声で挨拶をする。
分かってる。誰も返事をしないんだろう? 俺は滅入りながらも、再び挨拶をしようとした刹那―――。
「先生、おはよう」
やはり彼女だった。ひかるだった。明るい笑顔で俺に挨拶をするひかる、その姿はやはり…………。
「あ、あぁ。おはよう」
本当はもっと言葉を交わしたかった。抱きしめたかった。だけど今はできない。皆が見ている。俺は教師なんだ。
「また教室でね、先生」
ひかるはもう一度微笑むと、校舎に消えていった。
ひかるの一言。その一言で俺は幸せな気持ちで溢れ、その後の挨拶も気持ちよくできた。俺はやっぱりひかるが好きだ。
しかし何故だろう? こんなにも幸せな気持ちなのに頭が重い。体がダルい。