キミの写真
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身体が、何か柔らかいものに包まれている。鼻につくのは消毒液と洗剤の香り。
此処は……保健室だろうか? そう、多分そうだ。この羽毛布団の暖かさに覚えがある。
とりあえず体を起こそうとしたが、指先が僅かに動いただけだった。それどころか目も開けられない。
「あ、先生起きたの?」
耳に届いたのは柔らかい、一番聴きたかった声だった。それだけで、俺の霞掛かった思考が晴れた気がした。
でも俺の口は、それに上手く応えられない。痙攣するように動くだけで、言いたい事すら伝えられない。
「……ぅ…………ひか、る?」
「うん、僕だよ。
だから大丈夫。まだ寝てて?」
そう言って、ひかるは少し乱れた布団を掛け直してくれた。ふわりと舞った風に、ひかるの薫りが乗っていた。
ずっと、ずっと感じたかった彼女の肌が近くにあると思うと、どうしようもなく反応する俺の身体。
でも少しも動く事が出来なくて、頬に冷たい雫が滑った。
この弱気は、きっと、熱の所為だ。そうに違いない。
「ひか……る……」