キミの写真
それから少しして。校舎に残っている生徒がいないか一通り見回った後。
俺は愛車に乗り込みアパートへと走らせた。
途中カップルらしい学生達を何人も追い越した。
もし俺もひかると同い年だったら、手を取り合い帰れたのだろうに……。
カーラジオの音量を少し上げて家路を急いだ。
◆
「ただいま……」
アパートに一人暮らしをしているので返事がある訳がない。
靴を脱ぎ、部屋の電気をつける。
着ている上着をハンガーにかけ、飼っている金魚に餌をやる。
代わり映えない動作の後台所へ向かう。
俺もメシにするか、と冷蔵庫を開けると悲しいほど何もなかった。
うなだれながら渋々買い置きのカップ麺を手に取る。
ヤカンに水を入れ火にかける。今朝の味噌汁も同時進行で温め中だ。
出来上がったカップ麺を手に、考えてしまう。
……こんな時に、ひかるがメシを作りに来てくれたらなあ、なんて。
明日の授業の用意をしつつカップ麺を啜る。ぼうっとしたままひかるのエプロン姿を妄想……もとい想像する。
……悪くない、悪くないぞ。
――だが現実は高い障害のある恋。
今はカップ麺を啜って明日に備えることしかできない訳で……。
明日、ひかるに会ったら今日の事を謝ろう。
アイアンクローした手を見つめ、ひかるに会える明日を思いながら。
そうして静かに夜は更けていった。