キミの写真
◆
「新一ぃー!! はーやーくー!!」
制服姿で先を行くひかるが大きな声で俺を呼ぶ。急かす姿にはぶんぶん振られる尻尾が見えるようで、喜んでいる犬を連想させる。
本日快晴、日はまだ高く。
二人してやってきたのは写真屋さん。
仲直りする前に学校から出てしまったため、俺とひかるには卒業式の写真が一枚もなかった。
俺としては別段気にするようなことではないと思っていたのだが、ひかるはやはり思い出を形として残しておきたいらしい。
「はい、笑って笑って」
俺の倍は長く生きているだろうおじいさんが、三脚のついたカメラを俺とひかるに向けている。
俺は卒業式に着たスーツに身を包み、隣に立つひかるの横顔を見つめる。
「……ねえ、新一」
彼女をぼんやり見ていた俺を、ひかるは真正面を向いたまま呼び掛ける。
「うん? なんだ?」
「えっとね、えへへ……」
振り向いたひかる。
きっと俺は、その顔を生涯忘れない。
その笑顔は、俺の胸に、キミの写真となって残るだろう。
「幸せにしてねっ!」