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キミの写真

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「先生……」


「新一だって言ったろ」


「うん、ごめん……先生」



 同時に服を強く掴まれた。離れないように、しがみつくように、縋るように。

 そんなことをしても、どうせ俺は何処へも行けはしないよ。



「……一つだけ、いいか?

 あいつは………いや、悪い、なんでもない」



 そう、もうどうでもいいんだ。 どうせもう、ひかるを放す気はないんだから。



「……プリン、ありがとうな」



 唐突に、こぼれ落ちる言葉。



「あの時のも、凄く旨かった。嬉しくて、言葉も出なかった」



 心は、小さな呟きでさえも、止めるつもりはないようだ。

 当然か、伝えたい相手がこんなに近くに居るんだから。



「ごめんな、上手く言えなくて……あげく勝手に落ち込んで……」



 ひかるは反応を返してはこない。

 ただ、彼女の震えが、押し殺した嗚咽に変わっていく。



「ありがとうひかる……ここで俺を思って、待っていてくれて」



 この小さい身体で、誰にも言えず一人で耐えて……
 不安を塗り潰して笑顔を向けてくれていた。



「ありがとう。ひかる」



 何度言っても足りない。

 もっと解らせてやりたくて、両腕に力を込めた。


作品名:キミの写真 作家名:アテナ