キミの写真
◆
あちこちで、生徒達が互いの別れを惜しんでいた。 卒業生全員がたむろしているため、正門は人で溢れている。
暖かい。春の陽射しが柔らかく体を包んでくれる。
この季節でそう表現するのは早い気もするが……実際暖かかったんだから仕方がないだろう。
式は無事に終わった。
だが俺にはまだ、大きな山場が待っている。
話したいことも、話さなければならないことも沢山あるんだ。
でも……さすがに、校内で捕まえる事は出来ないだろうな。 人目もあるし、なにより感情を抑えて話しをしたくない。
もう迷うことも躊躇うこともないし、時間もある。
なんなら、家まで行ってしまえばいい。
……どうしようか、ゆっくり考えるか。
思案しながら、玄関口に戻って靴箱を開ける。
「………?」
……なんだこれ。 俺の靴箱に不法侵入者がいた。
淡い桜色の小さな紙袋だ。
そっと取り出して、口を開けると中には手紙と……プリン?
俺は湧く期待に、慌てて手紙を取り出した。