キミの写真
「そうだ……」
歌声が響いていた。生徒と教師が奏でる最後の歌が、俺だけを置き去りにして進んでいく。
俺は何を勘違いしていたんだ。
最初から、何一つ進んでいなかったのに。
「俺は………」
もう終盤だ。男性と女性のハモりは深く、決して轟音ではないけれど、この広い体育館に響いていた。
何もしていないのに勝手にいじけて、勝手に落ち込んでいたんだ。
ひかるは、まだ別れ話を切り出していないのに。
「ひかるが…………」
俺の声は、たくさんの歌声に溶けて、消えていった。隣の先生すら気付かない、小さな声。
聞かれたいとも思わない。これは、彼女だけが聞いてくれればいい。
その為の言葉だから、俺は何度でも練習する。もう失敗したくないから。ちゃんと、聞いていて欲しいから。
「好きなんだ………」