キミの写真
「在校生一同――」
上乃宮が、答辞を読み上げていく。その凛とした声は、いつの日にか聞いた、か細い声とは違う。
一人の、女性の声だった。
羨ましい。辛くても、その両足でしっかりと立っていられる、その強さが。
――俺は未だに、立ち止まったままだってのに。
俺はひかると別れたあの日から、ずっと未練がましく過去ばかりを見続けていた。
それなのにどうしてお前は、前を向けたんだ。どうして、そんなに強いんだ――?
心の中で自問自答する。
同時に、自分に対して怒りを覚える。
――あいつは、あいつの足で歩いてるのに、俺は――
そこまで考えたと同時に、思考をストップさせる。
恐る恐るだが、上乃宮の方を向く。
あいつは俺の大切な教え子だ、目を反らす訳にはいかない。
見ると、瞳を潤ませた上乃宮が、残りの文章をしゃくりあげながら読んでいた。
――なぜだろう。
なぜ彼女は、あんなにも輝いて見えるんだ?