キミの写真
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「卒業証書、授与」
教頭の強張った声が、マイクを通して広い空間に広がる。
ちなみに、我が校の卒業式はセオリー通りの式次第を伝統としているため、全く面白みがない。
これが全校集会ともなれば、うたた寝をする生徒もいる。
だがやはり、卒業式ともなれば話は違う。 どの生徒を見ても、何かしら感慨深い顔をしている。
「普通科A組。代表、花岡幸雄」
男子生徒が緊張した面持ちで壇上に上がった。 そして、三年間の修学の証を受け取る。
ひかると話せぬまま、ついに、というかなんと言うか……この日が来てしまった。
このままでいいはずはない。
終わらせたくなんて、ない。
だが、どうにもタイミングが掴めなかったんだ。
……言い訳でしかない。それは分かっている。分かっているんだ……
「次、答辞。
卒業生代表、上之宮玲奈」
上之宮……
彼女は、凜。と前を見据え、胸を張り歩く。 何事も無かったかのように見える彼女に、軽く憧憬の念を覚える。
結局、彼女にも嫌な思いしかさせることが出来なかったな。
俺は彼女を見ていられず、目を伏せた。