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キミの写真

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 俺はそれを、指の腹で拭った。温かくも冷たい泪は、そんな馬鹿らしい行為を責めるように腕を伝っていく。



「ごめん、な……」



 もう一度出た謝罪は、誰に向けたものなのだろう。自分で言っておきながら、もう、判らなかった。


 上乃宮は口を開かない。そして、滴が止まることもない。

 多過ぎる感情の露呈を、場違いにも美しく感じてしまった。



 なんでだろうな?

 心ではひかるの事を思っているのに。なんでだろう。勝手に動く身体を止める事が出来なかった。



「……あっ………せん、せ……」



 俺は、乱暴に彼女を抱き寄せた。嫌がってない事を確認して、更に強く抱き締める。



「なんで……だろうな……」



 唇が震える。足が震える。

 不安が、不安定な俺を殴ってくる。崩れ落ちそうになった。



「なん、で……こう………
上手くいかねぇ、かなぁ……」



 死にたいと、本気で思った。

 孤独ってのがこんなに恐ろしいなんて知らなくて、上乃宮が居たから助かった。



 頬を滑った何粒もの後悔を、彼女は黙って受け入れてくれた。

 背中に回っていた腕が、酷く、暖かかった。


作品名:キミの写真 作家名:アテナ