キミの写真
ひかるが頬笑んでくれる――
この事実がうれしくて、俺はより声を張り上げる。
突然大きくなった俺の声に、批判をしていた生徒達の抗議が止まる。
俺の頭の中は今、ひかると過ごした日々でいっぱいだった。
――帰るときに必ず、眩しいぐらいの頬笑みをくれたひかる。
――熱で倒れたとき、傍にいて心配してくれたひかる。
大好きなひかると離れるのは……辛い。
知らず知らずの内に、目頭が熱くなる。
――かっこわりぃ――
潤む瞳を生徒達に見られないように、天井を仰ぐようにして歌う。
最後の一小節が終わり、ピアノの音も終わりを告げるかのように、余韻を残して消える。
――終わった――
生徒に何を言われようと、俺は立派に歌い切ったと、胸を張って言える……
ふと、目の端でひかるを見る。
何だろう……ひかるは頬笑んでいる。
だが、その笑みには何か別の感情が含まれてる……。
喜びとも、寂しさとも違う……。
……そうだ、俺もよく知ってる感情だ。
――やっと気付いた。
ひかるは、あの日からずっと、後悔していたんだ…………。
俺と同じように……。