魔本物語
「じゃ、アウロくんとセイとファティマが来たことだし会議はじめよっか。うんじゃ、今回の議長をやるアタシの進行で会議はじめちゃいま〜す」
会議の場所は四界神と陰陽神の六人の城で行い、会場となった城の主が会議の議長もやることになっていた。
ゼークが話しはじめてすぐ、イズムが無表情のままボソリと呟いた。
「ゼークが議長で会議がまとまるはずないわ」
これから本題を話しはじめようとしていたゼークの耳がピクリと動いた。
「イズムちゃんなんか言ったぁ?」
「いいえ、言ってないわ」
小さな声でそう言ったイズムは、ゼークと話している時も相手と視線を合わさず、斜め下の机の一点を見つめていた。
セイの横ではファティマが自分の腕で腕枕をして机に突っ伏してすでに寝ている。もう一方のセイの横では、アウロが机に足を投げ出して鼻歌を口ずさんでいる。真剣にゼークの言葉に耳を傾けているのは堅物のディティアだけだった。
「ゼーク、早く話の本題を話してくれたまえ」
ディティアに促されてゼークはヤル気なさそうに話しはじめた。
「え〜とぉ、魔導砲の整備は完了って報告が入ってて、あとは会議に来てないヒリカくんとイーマ様待ちなのよねぇ。あの二人が〈大きな神〉の居場所さえ特定してくれれば、ド〜ンと一発かましてやるんだケド」
大あくびをしたアウロが突然席を立った。
「それじゃあ、俺はヒリカとイーマの報告が入るまでベッド借りて寝てるぞ。おやすみ」
背中を向けながら手を振るアウロは本当に会議室を出て行ってしまった。
次に静かにイズムが席を立った。
「厭きたわ。わたしもヒリカとイーマから連絡が来るまで休んでくる」
足音も立てずにイズムは会議室を後にした。
そして、ディティアはこう言う。
「さっ、ゼーク会議を続けてくれ」
真面目なディティアに見つめられたゼークは、オーバーリアクションでおでこをぺちんと叩いた。そして、そのままうずくまって頭を抱える。
「サイテー!」
ディティアは無言のままゼークを見つめ、彼女が話すのを待っている。しかし、ゼークはうずくまったままで立とうとしない。
どこからかいびき声が聞こえてきた。ファティマだ、ファティマ爆睡していた。
もう、とても会議が続けられるような状況ではなかった。
ため息をついたセイは心の底から『こんな人たちが神様なんだ』としみじみ思った。
作品名:魔本物語 作家名:秋月あきら(秋月瑛)