贈り物
この権兵衛が海軍大臣になってからのことである。権兵衛は対露政策の一環として計画していた、軍艦購入の手付金の捻出に窮し、内相の従道に相談しに行った。手付金の支払期日が迫っており、それまでに発注をかけなければ完成が間に合わなくなる。従道は相変わらずぼうとした様子のまま権兵衛の話に耳を傾けていたが、聞き終わると少し間をおいてこう答えた。
「そいは予算ば流用してでん払うほかなか。バレたらまた方々せからしかこつもあっがじゃろうが、そん時はまあ、仲良う並んで腹でん切りもんそ。おいらが腹で軍艦が出来っがなら、そや本望じゃっで」
そう言って、にこりと笑った。
こうして発注されたのが、明治三十七年に勃発する日露戦争で連合艦隊旗艦(きかん:司令官が乗る船)となった、軍艦「三笠」である。だが開戦の二年前に死去した従道が、その活躍を見ることはなかった。
「そいは予算ば流用してでん払うほかなか。バレたらまた方々せからしかこつもあっがじゃろうが、そん時はまあ、仲良う並んで腹でん切りもんそ。おいらが腹で軍艦が出来っがなら、そや本望じゃっで」
そう言って、にこりと笑った。
こうして発注されたのが、明治三十七年に勃発する日露戦争で連合艦隊旗艦(きかん:司令官が乗る船)となった、軍艦「三笠」である。だが開戦の二年前に死去した従道が、その活躍を見ることはなかった。