小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

死体お一人様

INDEX|4ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 



俺は、綺麗に整えた死体を車に運んだ
綺麗な箱に入れてやるのは、葬儀屋の仕事
俺の仕事は、死因の特定やら、ひどい死に方をした死体をつなぎ合わせてやるくらい
たまーにこうやって遺族の話を聞いてやったりするだけだ

別に好き好んでこの仕事を始めたわけじゃない
社会の落ちこぼれの最終選択先とでもいっておくべきか
常人じゃ避けて通るこの仕事は、俺のような落ちこぼれの仕事だ

俺には愛せる家族もない
俺を愛する家族もない
あったのは科学と医学の知識だけ



「ありがとうございました…孫もきっと天国では幸せです…」

「天国や地獄が本当に存在するのかは、死んでみないとわからない
俺はどちらかと言えば非現実的なモンは信じない主義なもんで、
そういう話は苦手ですね」

「そうですか、立派な方は立派な意見をお持ちなのね」

「俺が立派に見えますか?俺は人に褒められるような人間じゃあありませんよ」

「あら、また会いたくなってしまうくらい、魅力的な男性ですわよ?」

「ははっ、それは話の趣旨がかわってきますね、でも、またここに来たいとは不謹慎です
もう、来ないでくれ!とは言いませんが、二度と俺に会わないことが、あなたの幸せかと」

「素敵な言葉、本当にありがとう…」

「いいえ、では」

俺は車を見送った
今日はこれといって仕事をした気がしない
まるで俺は葬儀屋にでも転職したかのような
そんな仕事しかしていない

だがすがすがしい
ここに来たばかりのおばあさんの顔と
帰り際のおばあさんの顔


人という奴は本当に表情が豊かだ
泣いたり笑ったり怒ったり困ったり
それが人間が動物に勝る所だろうね

生きた人間はやはりすばらしい

作品名:死体お一人様 作家名:餅きなこ