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放課後不思議クラブ

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「こっくりさん、こっくりさん、おいでください……」

皆で静かに声を合わせて、こっくりさんを呼んだ。変わらず、教室の空気は私にとって重苦しいままだった。一拍置いて、黒木が言った。
「こっくりさん、おいでなら、『はい』と返事をしてください」
最初の位置である鳥居のマークから、十円玉がじりじりと動き出した。
「……来た」
「どうする?何をきく?」
「逸深の好きな人とか?」
「久立に決まってるじゃん。きくまでもないよ」
こっくりさんにきくのは、たいてい下らないことだ。あの子の好きな人は?とか、次のテストで出る問題だとか。これは、放課後の暇つぶし、遊びなのである。こっくりさんは、何度かやったことがある。その時も、そんな感じで下らない質問をして遊んでいた。
しかし、その日、私は言いようのない恐怖に襲われた。

ガシャァン!

 私は十円玉から指を離すどころか、机ごと拒絶した。強い力で、勢い良くしたせいで、机は私の反対側に倒れた。必然的に、私の正面にいた小夜子さんは倒れた机の下敷きになって、大きな尻餅をついた。
「何やってるんだ!」
「どうしたの?!」
小夜子さん以外のメンバーは、反射的に机を避けたようで、最初の立ち位置からは、半歩ほど後ずさっていた。皆はたいそうびっくりした様子で、私と小夜子さんを交互に見た。私自身、とても驚いていて、どうしてこんなことをしたのか、説明どころか言葉も出なかった。
「大丈夫?」
小夜子さんは、差し出された久立の手を取り、無言で立ち上がった。仕事の早い希代は、ガタガタと机を鳴らしながら、私が張っ倒してしまった机を元に戻していた。こっくりさんの紙は普通に落ちているのが見つかったけれど、十円玉はどっかに飛んでいってしまって、とうとう見つからなかった。
「小夜子さん、ごめん……」
「いいのよ」
小夜子さんの鈴のような声が、どうにも居心地悪く感じた。……感覚の話ばかりしてる。でも、その日の違和感の正体や、散々感じたおそろしさの原因は、結局今だって何かわからなくて、論理的に説明できない。

「今日はもう帰ろう」
「そうね」
 誰かがそう提案し、皆が帰り支度を始めた。早くもこっくりさんのことは完全に忘れ去ったようで、今日の歌番組には誰が出るだの、昨日のドラマの展開はイマイチだっただの、いつも通りの放課後クラブが戻ってきた。私の呼吸も、違和感も、徐々に緩和していく。
作品名:放課後不思議クラブ 作家名:塩出 快