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放課後不思議クラブ

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■こっくりさん


 私はいつもの通り、放課後クラブに顔を出した。特に決まった目的はなく、その時々で、流行のものとか、お喋りとかをして、時間をつぶすためのクラブだった。私たちの放課後クラブに与えられた教室は、三階の美術室。この学校には美術部や、それに準ずる部活がないので、好きに使わせてもらっている。

 日直の仕事で私が遅れてくると、教室には既に、殆どのメンバー、というか、私以外の全員が集まっていた。リーダーの黒木、隣のクラスのミナと和馬、ボーイフレンドの久立、黒木を慕う希代、そして、六目小夜子さん。
「遅れました」
「早く座んなよ」
ミナにそう言われ、私は定位置についた。隣は希代、その反対の隣が小夜子さん。正面には久立。美術室の、作業用の六人掛け机に、私たちは輪になって座っている。私の分の椅子はもうなかったので、隣の机から一脚を拝借した。
 その日の美術室はおかしな感じだった。空気が重い。息が苦しい。私はほんとうに、呼吸をしている?
なんだか神妙な面持ちで、黒木がメンバーの顔をぐるっと見渡し、静かに言った。その日どんな活動(という名の暇つぶし)をするかは、リーダーシップ溢れる黒木が決めるのが常である。なんとなく優柔不断が付きまとう他のメンバーに任せたのでは、なかなか話がまとまらないからだ。
まだ昼の短い今の季節、放課後の美術室にはオレンジ色が差し込んでいた。いつもの風景で、いつもと同じ、綺麗なはずなのに、何故か今日のこの教室には不釣合いな気がした。
「今日はこっくりさんをやるぞ」
黒木が視線をやった先には、一人掛けの学習机(教室にあるスタンダードなの)に、こっくりさん用の紙と十円玉が用意されていた。
 こっくりさんとは、あいうえお、YES、NO、男、女、そして神社の鳥居のマーク書いた紙に、十円玉をのせ、その上に指を添えて、どんな質問にも答えてくれる狐の霊を呼び出すという流行の遊びで、本当は、校則で禁止されていた。理由は、こっくりさんをやった生徒がこっくりさんに取り憑かれて人が変わったようになって、乱暴になったり、自殺してしまったり、おかしなことを言うようになってしまったりしたからだ。
だけれども、子供の好奇心に勝るものはない。もしかしたら、こっくりさんに取り憑かれてしまうかもしれない、そんな恐怖でさえ、いや、恐怖こそが、「こっくりさん」という「遊び」に花を添えている。

しかし、この重苦しい空気が、これこそが、こっくりさんをさせているような錯覚さえした。皆は随分と乗り気で、我先にと席を立ち、十円玉に人差し指を置いていた。ペンだこのある指は黒木、痛々しいほどの深爪は几帳面な希代らしい。反対に、ミナの爪は随分と伸びていた。数馬の指は、健康的に日焼けした彼の顔と同じ、浅黒い。久立は、体はひょろっとしているのに、節が太く爪も小さくて、いかにも男らしい。小夜子さんの指は、色白で、すらっと細く伸びて、形の良い爪はきれいに切りそろえられていて、美しい。その美しい指先に、私の指先をひっつけるように、指を置いた。
「よし、皆、絶対に指を離すなよ」
こっくりさんをきちんとした手順で帰さないうちに指を離したりして、中途半端にやめてしまうと、こっくりさんはひどいいたずら、それこそ、こっくりさんをした誰かに取り憑いたりするのだ。
作品名:放課後不思議クラブ 作家名:塩出 快