Under the Rose
へたり込んだままで、必死に砕けた指輪のかけらをかき集めようとする桂。
そのあまりにも痛々しい姿に耐えられなくなった真は、その視線を沙耶へと戻した。
「……沙耶」
再び名前を呼ぶ。
真にとって沙耶は最後の血縁者だったが、そのような意識も実感も彼にはない。
ただ、大切な仲間であり友人だった。
だが、その思いは最後まで一方通行だった。沙耶の抱えていた荷物が、いつまでも邪魔をしていたのだ。
『もし、今とは違う形で出会っていたなら……あるいは、ね』
過去のその一言は、彼女がみせた最初で最後の真実。
直後、真の身体が現実に追いつき、静かに涙の滴が落ちて――沙耶の頬をわずかに濡らした。
「ばか……!」
止まることを知らない涙に視界を奪われながら、真は沙耶の身体をひときわ強く抱きしめた。
作品名:Under the Rose 作家名:桜沢 小鈴