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Under the Rose

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15. ある男の話.1(2/2)



やがて交じり合っていた昼と夜は完全に分離し、辺りは夜の闇に包まれた。
雲が多いために、空に輝く月はその姿を現してはまたすぐに見えなくなる繰り返しだった。
そんな中、明かりを失い真っ暗になった部屋の中で一人で膝をかかえうつむく真。
「過去に何か悪いことでもしたのかな、私……」
考えている事がそのまま口に出ていることに、本人は気が付かない。
桂に何を言われるかわかったものではなかったので、暗くなり次第その部屋を後にする予定だった真だったが
どうやら考え事に夢中になってしまい、外はもうすっかり夜だということも分かっていないようだ。
「どうしたらいいのかな……」
「迷っているのなら、今から私が言う事に従えばいい」
「……誰?」
自分一人しかいない部屋で聞こえた、自分ではない者の声。
思索のふちにやっていた意識を一瞬で現実へと引き戻した真は、その声の主を探そうとした。
――探す必要もなく、その人物は目の前に立っていた。
「そう警戒するな。今回は、私個人の意思でここに来た。配下は一人としていない、呼び出すつもりもない」
「キース……」
扉はしっかりと施錠されているために入れない。
となると、開け放たれた窓から入る他にこの部屋へ立ち入る手段はない。
けれども、普通の人間であればバルコニーへたどり着くだけでもなかなか骨が折れるが、吸血鬼であればさほど関係ないために、キースがこの場に立っているのはさほど不思議なことではなかった。
「よく聞け。主は、お前の周りにいる二人の吸血鬼を処分する気でいる」
「沙耶達を?」
「そうだ。だが、主の目当てはあの二人ではなくお前だ。だから私はお前を迎えに来た」
「……」
「来い、真――――こちらへ」
静かに差し伸べられる、キースの手。
病的なほどに真っ白な肌の下に、確かに血が通っている。人間も吸血鬼も、赤い血を流していることは変わらない。
同じようにして生きている。
そして真の目の前に立っているキースも、生きているからには様々な感情をその内に抱えている。
「……」
少しのためらいを見せた後、真はまっすぐにキースの濁った両目を見――言った。
「わかった」


作品名:Under the Rose 作家名:桜沢 小鈴