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Under the Rose

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立ったまま眠っているわけでもなさそうだが、そのシルエットからは考えを読むのはほぼ不可能だった。
「桂、ちゃん」
間に少しのぎこちなさをはさみ、やっと口を開く。
「何かあったの? 姉さん」
「ん、いいや、何でもないよ。桂ちゃんこそだいじょぶだった? 一人で任せてごめんね」
振り向いた沙耶の表情は、桂が普段見ているものとなんら変わりなかった。
緊張感が感じられない、無邪気なはにかみを浮かべている。
それを見た真が何やら言いたそうにしていたのを、桂はあえて無視した。
二人になにかがあったことは確かだったが、桂にとって沙耶の笑顔より優先すべきものなどありはしない。
たとえそれが演技であっても。
「……」
二人の会話を、そばで特に意識することもなく聞きつづける真。
そして、そのやりとりを聞いているうちに心の中で一つ確信に変わったことがあった。
沙耶は、桂に自らのことを何一つ話していない。
二人の本当の間柄がどのようなものかは分からないが、先ほどの話からするに
少なくとも見たままの『姉妹』ではないように思える。おそらく年齢差も少なからずあるのだろう。
自らの心の根底にあるものを話して、妹との間に亀裂が入るのを怖れているのか。
はたまた、特に話す必要はないと判断しているのか。
「(わからない……)」
小さなため息をついたあと、真は自らの身体にある割と新しい傷をなでた。
そして、思い切り爪を立ててみた。
痛みはなかった。


作品名:Under the Rose 作家名:桜沢 小鈴