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Under the Rose

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09.残照(1/2)



真の姿が見えた。
ぎりぎりくくれるだけの髪を、深紅のリボンで留めている。
穏やかな笑顔を浮かべる真は、誰かと会話しているのか、やがてはにかむようにして顔を赤らめた。
どこかで見覚えがあるような姿だった。

そんな真がこちらを見た。
一瞬悲しそうな顔をして、その後はまた先ほどのような柔らかな笑顔を浮かべた。
自分が知っている真とはまるで違う、陽だまりのような暖かな雰囲気だった。

場面は変わって、今度は金髪の青年が見える。
きょろきょろと何かを探すようにして、あっちへ行ってはこっちへ戻るを繰り返している。
綺麗な顔だ、と思った。
同時に、見ていて不思議と安心する姿だった。

めまぐるしく場面が変わっていく。
冷たい柩の中で眠っている。
目覚める日を待つどころか、自らが眠ってしまったことすら気付かずにいる。
直後、狭い柩の中にはおさまりきれないような強い孤独を感じた。

『――助けて、』
真の声が聞こえたあとに、自分の意識は遠のいた。



一人立ち尽くす沙耶の前には、おかしな光景があった。
自らをかばい、桂は走ってくる真を逆に突き飛ばした。そして、そのまま二人折り重なるようにして倒れて。
そのまま、二人揃って意識を失ってしまっている。
「……うぅ」
先に意識が戻ったのは、真だった。
積み重なるように気を失っている桂をぼんやりと見つめる。その直後、ハッとしたように目を見開いた。
「い……いや、いや……いや……ッ!」
声をうわずらせ、ひどく脅えた様子の真。そのまま強い力で桂を突き飛ばし、ずるずると後ろへ下がる。
「……ん」
「大丈夫かい、桂」
「姉さん、何がどうなって……つっ」
意識が戻るなり、桂は全身に走る痛みに気付いた。立ち上がることもできずに、沙耶の支えを借りる。
掴んだ沙耶のコートの袖は、広い範囲が血で濡れていた。それだけでも、相当の傷を抱えていることが想像できる。
平気そうにはしているが、沙耶もいっぱいいっぱいだった。
「見たわね、桂……わた、わたしの心を……見たのねっ!?」
どもりながらのそれは、ひどく聞き取りにくいものだった。手足は震え、目の焦点は完全に合っていない。
真の突然の豹変には、二人とも返す反応が見当たらなかった。
「……やっぱり、あれは貴方の記憶なの」
「あぁ、いや、もう……やめて……嫌……ッ!! 私を見ないでッ!!」
声を荒げ、頭を抱える真。
「真……?」
それは、完全に演技というレベルを超えていた。近寄ろうと痛む体を動かした桂を、沙耶が手で制止する。
「誰かいる」


作品名:Under the Rose 作家名:桜沢 小鈴