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Under the Rose

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07.鷹と蛇/その2(2/4)



「やれやれ、本当に二人はマイペースだな……」
自らが二人に電話をかけた回数を計算しながら、穂村は何度目かのため息をついた。
なんとなく、随分前に動かなくなってしまった左足をなでてみる。
「(なでたらまた動き出すってんなら、何度でもなでるけどな……)」
日当たりが悪くかびくさい部屋に、マイペースすぎるハンターに、車椅子なしではまともに動けない自分。
そういったものが揃えば、嫌でも考えが暗くなってしまう。

そんなよどんだ空気を吹き飛ばすように、突然の客人は乱暴にその扉を開けた。
「失礼しますッ!!」
「おや、伊織。久しぶりだね、元気してたかい」
伊織と呼ばれた客人は、スーツに眼鏡、そして神経質そうな顔が特徴的な青年。
見かけからすると年齢は三十路手前といったところだろうか。
黒い鞄を持ち、いかにも不機嫌な面を浮かべているところはどこか桂と通じるところがある。

ずかずかとあがり込み、さも当たり前のように穂村の向かいの椅子に座る。
そして、鞄からいくつか書類のようなものを取り出し、それを机の上に突き出した。「なになに、」と目を通し始める穂村。
「今日はあの姉妹のことで来ました」
「ああ、それで?」
「それで、じゃないですよッ! 日なたの仕事じゃないんですからちゃんと管理してくださいよ、あなたッ!!」
荒々しくまくしたてる伊織。
感情がしぐさに出るのか、足は貧乏ゆすり。手はたまに乱暴に机を叩く。
だが、そんな伊織の行動にも穂村は慣れているのだろうか。さほど気にする様子はない。
「話がわからないよ。姉妹というのは、沙耶と桂のことかい? ちゃんと俺に伝わるように頼む」
「そうです、あの二人です。僕、前々から怪しいなと思って調べてたんです」
「伊織は相変わらず外国人が嫌いなんだな。別に何も違わないだろうに」
「そんなことはどうでもいいでしょう!? ……名前! 経歴! パスポート! その他全て何から何まで偽造ですよ、あの二人ッ!?」
「それで? 分かってるだろうが、ウチはそういうことは詮索しない」
「だからといって、そんな二人にあれを渡さないでください……大切なものなのに」
「いや、あれは俺じゃなくて爺さんの判断だし……。で、話はそれだけかい?」
「……それが、問題はこれだけじゃないんです。向こうのハンター達から、二人のことで手紙が来たんですよ」
「へぇ。読もうか」
その返事を聞くなり、伊織は書類の下に埋もれていた白い手紙を手に取り穂村へと差し出した。
表には流れるように美しい英語が書かれている。そして、端には鳥のシルエットをしたシールが一つ貼ってあった。
「このマークは……小夜啼鳥か。ふふ、相変わらず向こうの方々は見事な英語をお書きになる。まぁ本場の人だから当たり前か」
手紙を読む穂村を、伊織は厳しい目線で見つめた。
時折「なんて書いてあるんだ?」と詰まりながらも、やがて全てを読み終えたらしく、便箋を元のようにしまい直す。
数秒の沈黙が流れた。
「……ふむ」


作品名:Under the Rose 作家名:桜沢 小鈴