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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 その先にあるものを見たロイトゥとケリーは血の気が引いた。
「何?冗談言ってんだよ。あれはドラゴンフィストだぞ。核弾頭を落としてもかすり傷一つ付けられない、鉄壁の要塞だ。何故ドラゴンフィストと呼ばれているのか知っているのか?」
 ミナはあっけらかんと言ってのけた。
「知ってるわよ。ちゃんと、調べたんだから。10年前あの屋敷を爆撃する計画が立てられたって言う噂が立ち、その噂を信じた一部の住民が周辺5キロに渡り退去したんでしょ。結局何も起こらなかったけれどね。竜神が守ったって噂がたったんでしょ。噂よ、うわさ。竜神なんかいる分けないっしょー」と言った。
 ミナは真実がどうだったのかは知らなかったのだ。
 探偵仲間で情報収集のプロであるロイトゥが続けた。
「実はその情報はガセネタじゃなかったんだ。戦闘機の残骸からブラックボックスが発見されたんだ。ミサイルは確かにあそこ目がけて発射されていた。命中率100%のミサイルにもかかわらず、ミサイルの向かった先は地球政府軍高官の集まっていた司令室だった。ミサイルが発射された直後行き先が書き換えられたとしか説明がつかない。そしてミサイルを発射した戦闘機がドラゴンフィストの真上に来た時、稲妻のような閃光が戦闘機に襲い掛かった。その直後戦闘機のあらゆる機能が操縦不能となりパイロットを乗せたまま政府軍とつるんでいたマフィア一味のアジトにピンポイントで墜落した。この事件の関係者が一網打尽に制裁を受けた訳さ。関係者以外の犠牲者は一人たりとも出なかった。この話には付録も付いていた。粋な演出ってやつさ。関係した奴らは通信衛星の生放送でこの映像を見ていた。戦闘機がミサイルを発射したと同時に映像がいきなりみだれ、ノイズが激しく何が起こっているのか分析不可能に陥った。映像が回復したのは、着弾までの1分前だった。何処に着弾するのか分析に50秒かかるとしても、それに気が付いた時は、カウントダウンが始まっていたって訳さ。自分達の処刑放送を死の瞬間まで見ていたそうだ。ご丁寧にミサイルの着弾時刻と戦闘機の墜落時刻を同時刻にして。自分達の仲間の処刑も見せつけると言う念の入れようだ。ようするに見せ付けたかったんだろうよ。俺に剣を抜けば、同じ目に合うんだぞってね。今もって戦闘機を制御不能にして落したものが何なのかが判らない。自然現象だったのか、誰かが意図的に作り出したものなのか?いずれにしても発生源が有るとしたら、その真下にはあの要塞があるという事実であり、あの稲妻が要塞から飛び立つのを何台ものカメラで録画されていた。稲妻は竜が飛び立つ様に見えた為サンダードラゴンと呼ばれ、要塞のことは、竜の一撃剣、ドラゴンフィストと呼ばれる様になったんだ。だが、皮肉にもこの日からドラゴンフィストはスターダストの守り神となった。ドラゴンフィストがスターダストに有る限り地球政府だろうと、五大ファミリーだろうとも勝手なことは出来ないってね。手を出そうなんて考えるだけで自殺行為さ。それが誰であろうとね」
 ミドリが「どうして全員死んでいるのにそんなに詳しく分かるのよ?」と素朴な疑問をぶつけたら、ロイトゥは答えた。
「事件に直接関わっていない、ただのオペレーターが何人かが別の管制室に居たのさ。彼らはあの惨劇の中、唯一の生き残りだった。彼らが見た一部始終の証言と映像データが秘密公文書データバンクに記録されている。それらは、サンダードラゴンのピンポイント攻撃の精度の高さを物語っている。と言うより、あれは悪魔の技だ」
 ロイトゥが話し終えると同時にミナが元気よく、あっけらかんと観光案内でもするように言った。
「それでは、真下に見えてまいりましたのが、皆様お待ちかねの、悪名高きドラゴンフィストでございまーーーーす。これからドラゴンフィストにテイクオンしますのでシートベルトを装着してください。垂直降下しまーす」
「シートベルト、シートベルト・・急がなきゃ・・・・」ミドリがあせってシートベルトを装着した。
 高速エレビーターより早い速度で落ちて行った。
 「ヒイイイ・・・エエ・エエ・エエーー・・・」
 他の3人には悲鳴以外、もう言葉は無かった。コンテナが落ちて行くとドラゴンフィストのコンテナ収容用の巨大ドーム型ゲートがぶつかる寸前で開いた。
 何ともキワドイ。
 ドラゴンフィストには、搬入用ゲートもある。北の棟と呼ばれている建物がそうだ。ダイレクトで地下まで繋がることも出来る。
 ミナはドラゴンフィストと交信しているようだったが、3人にとってはそれ所ではなかった。
 DJ,と言う単語がしきりに登場する。なにかのコードネームであることは確かだった。
 コンテナは見事その中に着弾、いや、着陸した。
 ミナもこんなゲートがあるとは知らなかったが、DJがドラゴンフィスト上空に着いた時から誘導してくれていたので何の不安も無かった。
「生きてるか?」と、ロイトゥ。
「何とかね。」と、ケリー。
「あたし、死んだ。少し、ちびっちゃったし」
 ミドリ、大丈夫か?
「なに、のん気なことをいってんのよ?さー、降りた、降りた。遊びに来たんじゃないのよーー」
 お金も払う気がないくせに、人使いの荒いことで。
 ミナは、自分のスピード感覚を他の者も持ち合わせていると信じている。
 ユリスが何事かと思い出てくると、ミナ達もコンテナからちょうど出て来た。ユリスを見かけると駆け寄り一気に言ってのけた
「ユリス、あたしって行くところの無い、かわいそうな少女なんだーー。友達にもあんまり迷惑かけられないし、あなたの所は部屋もいっぱいあるし、あなたとの約束も果たさなきゃいけないし、いいでしょ?ユリス。贅沢は言わないよ、屋根裏部屋でも何処でもいいからさ。家賃だって払うよ。あんまり多くは払えないけど、新しい仕事も見つけたし。ほんとにもう足を洗ったんだ。だからいいでしょ?」
 ユリスは腕組をして難しい顔をして見せた。
「もしかして、アポなし?」と、ケリー。
「もしかしてじゃなくて、もろそうじゃん」とロイトゥ。
「って、言うかーー。こりゃ、マジで押しかけ女房ね」と、ミドリ。
 ミドリ、スルドイ。
 ミナは、まったく根回ししていなかった。
 両手に荷物をもったミナはじっと息を呑みユリスの言葉を待った。駄目ならこのままUターンだ。
 ユリスは困った振りをして、悪戯っぽく微笑み「いいよ、しかし我が家に屋根裏部屋は無い、好きな部屋を使うといい」と言った。
 「イヤッホー、やったわね、ミナ」
 奇声を上げて、飛び上がって喜ぶ、ミドリ。
「おめでとう。ミナ。よかったな」
 お前は、ミナの父親か?ロイトゥ。
「心配かけやがって、こいつーー」
 心配などしていないケリー。単なるお付き合いだ。
 へぼ役者が揃いも揃っていた。
 ミナは、途端に緊張の糸が切れ、ふにゃふにゃと崩れ落ちた。
 やっと実感が沸いて来たのか、立ち上がると、なぜか両手の荷物を高く放り投げた。
 「ヤッリーーーー」本音はドキドキものであった。
 やることも、お言葉も、お上品なミナでした。
 それをデスプが空中でキャッチしてこう言った。
「ミナ、俺の言った通りだろ。きっとうまく行くって」
 デスプはそのまま飛び去った。