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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 ロードスはミナの妄想にあきれてしまった。そんなことより、ミナにお説教をぶたれるとは思いもよらなかった。
 「誰が美女を一人じめしたって?俺にはそんな趣味は無い。人間じゃあるまいし。ユリスならやりかねないが、奴とも俺は違う。一緒にするんじゃない。失礼ばど。あんな根暗でもないし・・・・」
 ミナは納得したようにうなずき。
 「確かにユリスならやりかねないわねーー、初対面なのにあたしにキスしてきたしねーー。手は早いし。そこそこモテルし、それを考え出すと、気がやすまらないわーー。もしそんな事して、あたしにバレタラ、オシオキなんだからーーー。でもロードスの場合、ただ単に食わず嫌いなだけじゃないの?すこしは勉強しなさい。あたし先生になってあげてもいいわよ。もちろんレッスン料はいただくけれど。そうねー、ワンレッスンごとにチョコケーキで手を打たない?いい話でしょ。」
 ロードスはミナにオシオキされずに済むと思い、ホッとした。ミナ相手じゃ、勝ち目は無さそうだし、怒らせたくない一番の相手である。
 ロードスはミナに顔をチョー接近させ、まじまじとミナの瞳を見た。これほど無防備な生命体を過去見たことが無いから興味津々なのだ。
 「フーーーーン。」
 「なによーー、チョコケーキじゃ不満なの?値切るなんてセコイわよ。」
 ミナには、まず隠し事が見当たらない。
 恐れるものも持たない。
 このような場合、通常淘汰されるのだが、強すぎて淘汰される要素が無いのだ。
 何処を探しても疑いや、迷い、人間や生命体が必ず持つ執着心やエゴ、へたすると自己保身本能でさえ最低レベルだ。
 肉体も魂も生存への戦略や戦術が他の追随を許さないほど完璧であり、根本的にあらゆる面において無敵なほど強い。
 そういう生命体だからこそ背負う物も大きいのだ。
 あらゆる生命体の頂天に立つ者としか言い表せない。何かの事情で人間に似せているが、むろん人間などではありえない存在だ。自分自身であれ、自分以外のものであれ、ミナにとってどのような形態であるかと言う事はほとんど意味を成していない。
 常にものの本質を見抜いている。
 このような生物が存在するとは、ロードスは急におかしくなってお腹の皮がよじれるほど大声で笑った。
 バイオマシンであるロードスはミナとは違い長い時間をかけて訓練により強靭な肉体と精神を手に入れているが、それは作られたものであり、もともと備えられたものではない。
 そんなロードスが生まれて325年間で初めて笑った。
 バイオマシンに笑うという機能は必要無いと考えていたし、笑うということがどういうことか分からなかった。
 しかしこんなに気分のいい事がこの世に有るとは知らなかった。相手を騙し欺き、出し抜くことだけを教え込まれてきた戦闘マシン、ロードスにとっては異次元の世界に迷い込んだ愉快さである。
 ミナは笑い転げているロードスを見て、何故おかしいのか判らなかった。
「あたし何か変なこと言った?」
 ロードスはひとしきり笑って、やっと呼吸が出来るようになると息を整え言った。
「ミナ、君はちっともおかしくない、変なのは俺の方なんだ。だから気にしないでくれ。ミナとの約束は果たしたからな、これで貸し借りは無しということだ。チョコケーキの件は考えさせてくれ、少し暴利過ぎやしないか?もう少し何とかならないか?」
 「そんなことないわよ。激安よーー。相場荒らしよ。いいわよーー、ただでも。その代わりと言っちゃ何だけど、これからは、あたし達リアルファイティングフィールドから生還したクラスメイトよ。いい?おわかり?」
 ロードスは「わからん。クラスメイトってなに?」と訊き直した。
 ミナが何を意図しているのか分からなかったのだ。
 「だってあたし、身寄りが無いし、特殊養護施設で育ったから、学校に行って無いの。異星人や、違法に作られたアンドロイドや、やはり違法に作られた人間が友達で一緒に育った。だからユリス達のスリーオーワンが羨ましかった。あたしにも同じ学校のクラスメイトが欲しいよーーー。」
 『スリーオーワンがうらやましい?地獄だってあそこよりは、マシだ。しかし、そこまで言うにはそれだけの理由があるのだろう。』
 ロードスは何か大事な物が生まれたのを感じた。この男がこんな顔をするのか?と言うほど穏やかに答えた。
 「俺なんかでいいのか?他にもっとマシな奴がいるだろ。友人はよく選んだ方がいい。」
 ミナは本気で怒っていた。
 「何言ってんのよーーー。あなたじゃなきゃダメよ。リアルファイティングフィールドはあんたにとって特別な場所なんでしょ、あたしにとっても同じよ。あなたとでなきゃあの場所で戦わなかったわ。あそこでの戦いはあたし達にとっての学校だった。それともあたしとクラスメイトじゃーいやなの?」
 それは脅しですよ、ミナさん?
 ロードスはあわてて大げさに打ち消した。ミナの術中にまんまとはめられている。
「いや、違う。そんなことは決してない。誰がそんなこと言った?クラスメイトでも幼馴染でも何だってなってやる。言っとくが、これは、自慢じゃない。トリプレックス・エレンで俺にクラスメイトと呼べる奴は一人もいなかった。俺は、みんなに嫌われていたからな。誰も俺に寄り付かなかった。俺にとって、クラスメイトはお前だけだ。分かったか。」
 威張らなくてもいいでしょ。
 ミナはしめたと思い、いたずらっぽくほほ笑んだ。
 「フ、フッ、フッ、フッ、フッ。じゃー決まりね。ロードスとあたしはクラスメイト。つまり同級でマブ達で、そんでもって兄弟分ってやつよ。早い話、ダチね、いいわね。クラスの名前はロードスのROとミナのMIでロミよ。わかった?二人っきりのクラスだから。卒業したこれからはチームロミの結成よ。忘れないでね、あたし達、鉄の結束とハガネの絆で結ばれてるんだからーーーー。」
 勝手にどんどんエスカレートして行くミナだった。
 ロードスは、付いて行くだけで精一杯である。首フリ人形状態だ。
 「チームなら二人だけに通じる合言葉が必要よね。なんかあった時は便利だし、合った時、必ず挨拶代わりに言い合い、こうしてがっちり右手を組むのがオキテよ。だからーーー、なんか、かっこいいのがいいなー。合言葉は、えーと、エーートー、あっそうだ。『俺達やー、半端じゃーねーぜ、宇宙一の最強コンビ、チームロミだ。イエー。』の『イエー』のところで今度は左手でハイタッチ、って言うのはどう?かっこいいでしょ、でもちょっと長いかしら?もしあたしが忘れた時はこっそり教えてね。」
 『かっこいいですか?これって?』
 ロードスはあまりの馬鹿バカしさにあきれたが、ミナの提案に異論が有る訳がない。親指を立てて同意した。
 ミナも親指を立てて満面の笑顔を見せた。
 ミナは時が来たのを知り、くるりと背を向けて、立ち去ろうと歩き出した。
 しばらく歩いて、思い出したように振り返った。
 もうかなりの距離を歩いてきていたが、ためらうことなく、両手を口元に添えて大声で叫んだ。
 「ロードス、さっきはちゃんと言わなかったけれど、ありがとう。ほんとうにありがとうーーーー。」