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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 やられると思った瞬間、ロッキーが何処からか現れ、自らの体を盾にしてミナを守った。
 「ロッキー、なんて事を。」
 ミナが叫んだ。
 ロッキーは力無く落ちて行った。
 ミナはロッキーを追って行った。
 地面に激突する寸前でロッキーを抱きかかえ、そのまま水平飛行をして、安全そうな場所にロッキーを置いた。
 ロッキーの身に流れ弾や、攻撃の被害が及ばぬように素早くその場から離れた。
 ミナの目つきが明らかに変わった。
 先ほどとは別人である。
 もう攻撃をよけようともしない。完全に正気を逸している。
 ワンハンドレッドイレブンの使者達は、パンドラの箱を踏み潰してしまったのだ。
 現れたのは、魔怒鬼だった。
 ロッキーを打ち抜いたパトリシア目掛けミナの剣が猛牛のように襲い掛かった。
 「ナニ?バカな!」
 パトリシアは魅入られたように避ける隙も与えられず直撃した。
 死んだ魚のように空中に浮いたまま気を失っていた。
 ミナに向かって、ここぞ、とばかりに容赦ない攻撃が四方から加えられた。
 狂気の抵抗とも言える。
 ミナであっても、バリアを張って防いでいても、持ちこたえられやしない。バリアに亀裂が走った。
 「もうこれまでか?」
 ミナは、そうつぶやいた。
 その時亀裂がはしった。
 亀裂がはしった方向から来る攻撃が止まった。
 エリックが地上に墜落して行くのが見えた。
 同時に、攻撃が一斉に止んだ。
 体勢を整え直す為だ。
 事態と状況の把握もせなばならない。
 残るのはユンス、マカ、そしてドミンゴ。3人は陣形を組み直した。
 そのまっただ中に、何者かが侵入し、ミナをすっぽりと別のバリアで包み込み持ち去った。
 「ヤー久しぶりだな。ファイナルウオー以来だから、69年ってーところか?昨日のことのようだが、お互いに歳を喰ったものだ。」
 外観の変化はまったく見られない。単なる言葉遊びだ。
 ミナを持ち去ったのはロードスであった。
 ロードスはミナを自陣の後方、一番安全な位置に置いた。
 3人がかりでも今のロードス相手ではそう簡単には手出しは出来ない。
 相手の戦闘能力は、概略だけなら、数値化してサーチ出来るのだ。
 「ロードス。その子を渡して貰おうか。お前は謹慎処分中と聞いた。これが最後のチャンスだぞ。さーー、わたすんだ。」
 高圧的なドミンゴに対して。
 ロードスは鼻で笑った。
 「何の事だ?せっかくのチャンスを逃す手は無いと言う意味か?俺はお前らとは違う。ガイヤに造ってくれと頼んだ覚えも無いし、残れと頼まれた事も無い。初めからガイヤの犬に成るつもりは毛頭無い。ただ抜けるキッカケが無かったから仕方なく居てやったまでだ。ヒマつぶしにな。」
 ユンスが言った。
 「そう言う事なら遠慮はしない、ファイナルウオーの借りを返させてもらうぞ。」
 そう言うと、ロードス目掛けて、右のこぶしから緑色の光の束が襲い掛かった。ロードスはそれを素手で払いのけた。続いてマカ、ドミンゴも攻撃を開始した。いずれの攻撃もブロックし、信じがたいほど強靭な防御能力を見せ付けた。
 「帰り討ちだな。冥土の手みあげに俺が講義をしてやろう。なぜミナが一人で来たと思う。お前らを見くびったからか?いや違う、違う!」
 攻撃の激しさは増して行った。
 しかしロードスは全ての攻撃を受け止め、払いのけた。
 「そうじゃねーー。それはミナが自分に課した十字架だからさ。自分の十字架は自分で背負わなければならないとミナは考えている。馬鹿げていると思うか?そう、思うなら思うがいいさ。」
 ロードスが2回目の攻撃をした。ドミンゴを狙ったものであると誰もが思った。しかし空中から離脱して行ったのはマカであった。ダミーの攻撃に目を奪われているうちに、思わぬ死角から攻撃を受けたのである。
 「つっ、つよい。強すぎる・・・・・・」
 思わずドミンゴの口から、突いて出た。
 「おめーら、エリートには理解出来んだろーな、十字架を背負う事の意味も、十字架を背負う者の気持ちもよーーーー。」
 残りは二人となった。後ろからロードスの戦いぶりを見ていたミナが言った。
 「ロードス、今はお礼を言わないわ。それは、あたしの獲物よ、横取りしないで。すぐにどいてちょーだい。さまなくば、もろともよ。」
 ミナのゾッとするほど冷酷な響きの言葉がロードスの背中に突き刺さった。
 「やばい。」
 ロードスは一瞬にして上空に飛び去った。
 ミナと二人の刺客の間には何も無くなった。
 ミナが両手を前に押し出し。
 「破っ。」と蓄積したエネルギーをイッキに開放した。
 目には見えない空気の壁が鋼鉄の硬さで音速を超えたスピードで、二人に激突した。
 何処かによけることも、受身を取ることも出来ず、その衝撃でキリモミ状態となり、激しく回転しながら地上に激突した。
 二人が再び起き上がって来る事は無かった。
 ミナとロードスはロッキーの元へと急いで飛んだ。駆け寄って容態を調べたミナは言った。
 「あぶねーじゃないか?ミナ。」
 「めんご、めんご。軽いジョークよ。」
 「ジョークで、すまされっかーー!。このーーー。」
 ロードス君、キャラが違っちゃってますけどーー?
 「まだ息は有る。これなら助けられそうよ。」
 その時ロードスの電撃波がロッキーを焼いた。
 ロッキーは意識も無く黒こげになり、横たわったままである。体の運動神経伝達回路が焼かれている。痛みは無いであろう。
 ミナの顔色が青褪め絶望に彩られた。
 「なんなのよ?これーー!」
 呆然とするミナ。
 「いや失礼、ミナ。俺はお前さん側に付いた訳じゃー無い。クレイの奴にやる、手土産が欲しくてね。このままじゃーあいつに汚点が残る。ロッキーの身柄は俺達が貰う。」
 「ふざけないでよーー。ロッキーを返して。返してよーーーーー。」
 ロードスは何でもないように答えた。
 「わかった。返してやる。受け取るがいい。AIチップは今なら無傷だ。火力を調整してあるからな。ただしだ。時間を3秒だけやる。これから俺は3秒だけ目をつぶる。目を開けた時は完全にロッキーを焼き払う。その3秒間に何が起ころうと俺は関知しない。ワン、ツー、スリー。」
 ロードスは目を開けて、出力を上げてロッキーを灰にした。骨格だけが残った。
 ミナにとってはロッキーのAIチップを抜き取るのに3秒あれば十分であった。凄腕のスリですから。盗み出すのはお手のもの。
 もちろんロードスはAIチップが抜き取られたのを確認してから忌まわしい殺戮兵器の鎧を焼き払った。
 ミナの顔に笑顔が戻った。ミナは、いつでもゲンキンなのだ。さっき泣いてたカラスがもう笑っている。
 ベン社が社運を掛けて開発した、技術の結晶が泡と消えた瞬間である。
 「ロードス。あなたやっぱり良い人ね。ロッキーやあたしをなぜ助けたの。」
 ロードスは意識した訳ではないがミナに小首を傾け微笑んだ。どんな女性でもこれだけで夢心地になれるであろう。イチコロだ。
 ミナ以外は。
 「約束したろ。ミナ。俺が負けたら、ロッキーを返してやると。」
 ミナは意味が分からなかった。あの戦いでは、ミナの惨敗であったと認識していたのである。