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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 ロンはロードスが自分の戦闘力を上げる為にミナを利用しようとしたことを知っている。あの決戦から60年経つ。数段スケールアップした自分がどこまで出来るのか?本気で試してみたかったのだ。ミナはその相手として申し分ない。しかしその戦利品はロードスにとって予想以上のものだったはずだ。そしてそれはミナにとっても同じことである。収穫は計り知れない。硬い殻から抜け出し、飛躍的に短時間で覚醒を果たすこととなった。ロンは少しだけロードスについて話すことにした。
 「あいつはミナの知っての通りの奴さ。トリプレックス・エレンの伊達男。ミナと本気で戦えるのなら、どんな事でもするだろう。ロードスの考えそうな事だ。それでミナに殺されても、あいつは本望なのさ。たちの悪いガキだ、あいつ自身の弱さも醜さも迷いも不安も恐れも怒りも丸ごとぶつけて、目を背けずに受け止め、なおそれを認め、共に傷ついてくれる者がこの世に居るとは思わなかっただろうよ。ロードスを取り締まれる法はこの世にはないが、魂のアリカへのかすかな光は見出せただろう。昔あいつ等は戦いに傷つき、戦う事の意味を探していた。誰もそれを教えちゃくれなかったからな。そして今も探し続けている。無数の心の傷を癒しもせずに。」
 ミナは深くうなずいた。ロンはあわてて我に返り、感傷にしたってしまった自分を恥じた。
 「すまん、すまん。旧友に会ったもので、つい愚痴ってしまった。俺達の事なんぞ、ミナには関係ない事だ、忘れてくれ。」
 そう言うと自分の頭をこぶしでなぐり、ロードスの方へと去って行った。
 ミナはロードスの心の傷に比べたらあたしの傷なんて無いに等しいわ。と言おうとしたがやめておくことにした。
 またロンが困惑するだろうから。
 チャップはすぐに発進した。
 ミナはすぐに深い眠りに着いた。
 寝顔に笑みがこぼれた。体より先に心は既に到着したようだ。行き先はもちろんユリスの元。
 ミナにとって最も癒される場所。
 鉄壁の城、ドラゴンフィストへと。


   奪還
 ミナは42時間眠り続けた。ミナにとっては壊れた肉体を修復するのには十分であった。
 DJがノックする音がした。ミナはいつものように返事をした。
 「ハーイ、もう少し寝かせて。」
 姿の無いDJが耳元でささやいた。
 「よろしいのですか?もうお帰りになって2日になろうとしていますよ。テレックスが山のように入っております。わたくしが全て応対はしておりますが、ご自分で出られた方が良いのではありませんか?」
 ミナは眠っている脳をフルスピードで回転させた。DJの言葉を理解して飛び起きた。スリープカプセルの透明のカバーに頭をぶつけた。あわててカバーを開け降りた。
 何も身に着けてはいなかった。
 「なんですって2日も寝ていたの?何でもっと早く起こしてくれないのよーー。」
 両手を広げるとスーツが装着された。
 「1時間前に95%回復されました。お目覚めするタイミングを見計らっていたのです。わたくしも心待ちにして、お待ち申し上げておりました。怒らないで下さい。」
「ごめん。怒ってなんかいないわ。いつも感謝しているわ。問題は、そうじゃなくって、なぜ、もっと早く起こしてくれなかったの?と言うことなのよ。」
 DJは怒られた子供のように泣きそうに答えた。
 声は震えていた。よっぽどミナに責められたことがショックだったようだ。
 「わたくしにはそれは出来ません。ミナのお体にさわります。ユリスからも95%以下の回復では起こさないで欲しい。と頼まれておりましたし。わたくしもその意見には賛成です。」
 しょげかえったDJを気の毒に思い、ミナはDJについ、きつい事を言ってしまった事に後悔した。
「ごめんなさい。あなたを責めるのはお門違いね。今の言葉は取り消させて、予想外の事で驚いて、気が動転していたから。つい出てしまったの、許して頂戴。」
 そう言いながら食欲は旺盛でDJの用意した朝食にかぶりついていた。DJもDJで現金なもので、怒られていないと知るやいつもにも増して元気になった。
 「ご出発の用意は整っております。いつでも出られるようにチャップもお待ちしております。スープのおかわりはいかがですか?わたくしの特製スープです。」
 「もちろん頂くわ。DJはお料理の天才ね。本当にいつもおいしいわ。鍋ごと持ってきて。」
 「かしこまりましたですーー。」
 余ほど嬉しいのだろう。飛んで行った。
 ミナはジョークのつもりで言ったのだがDJは本当に鍋ごと持ってきた。
 鍋だけが、宙を飛んできた。
 DJにすすめられ、断れずにミナは4杯おかわりをする羽目になった。
 そこに、ユリスがノックをして入ってきた。
 口一杯にほうばったミナを見て微笑んだ。
 「大変な目に会ったね、でも回復して良かった。あれから大きな動きはロンから報告されていないから焦って食事をしなくても良いよ。DJに悪いから、味わってデザートまでゆっくり楽しむといい。その間、ぼくは、ミナの顔を見ていられる。」
 ミナは恥ずかしさのあまり真っ赤になってしまった。
 「ユリス、ごめん心配かけて。」
 ミナはみんながどれ程心配していたかロンのあのただならない様子から察していた。
 「仕方ない。ミナの決めた事だ。みんな納得しているし、どうのこうのと言えやしない。」
 「お前を戦場に送り込んだのはぼく達だ。ミナの生還を信じているが、心配はするものさ。それよりロードスがあの件で処分せれるから、次は別の刺客が送り込まれるだろう。危険は増すばかりだ。」
 ミナはロードスが処分されると聞いて、気が気ではなった。
 「ロードスはどうなっちゃうの、殺されるの?」
 ユリスはにこやかに答えた。
 「奴の事なら心配は要らない。あいつはミナ以外に怖いものなどいないだろうよ。あの戦いで思い知ったはずさ。ああやっていつも問題を起こすんだ。今回どんな処分になるかは知らないが、軽くは無いだろう。しかし本当にやばいと思ったら逃げるだけの事。死も覚悟で臨んだミナとの決闘だ。それに比べりゃ、ガイヤの追っ手をかわすぐらい何でも無い事さ。それにガイヤはいつでも消せるのにトップ8のファイナリストにロードスを生き残こらせた。そのロードスを簡単には殺さない。ガイヤの真意は計り知れないがね、今でも役に立つと思っているはずさ。しかしミナとの戦いでロードスは桁外れに進化した。そこまでガイヤが計算出来ているかは疑問だがね。」
 ミナはほっとした。自分のせいでロードスに迷惑が及んだのではないかと、思ったのである。
 ユリスの予言は的中する事となった。
 ガイヤの命を受け、エスパー狩りを秘密裏に行っている特殊部隊、シークレットエスパーハンティングコマンドーが組織された。
 SEHC、セックとか、マルアンと呼ばれている。
 その部隊が動き出したのである。
 ゾフィー直属ではなく、ガイヤが直接指揮下に置くスーパーエリート部隊の為、ゾフィーでさえその行動は知らされることもないし、口出しなど出来ようも無い。
 もちろんその詳細な情報をまだ誰もつかんではいなかった。
 ミナは大きく胸を撫で下ろしたそしてリンとして言った。
 「よかったーーー。」