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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 「やー、ボブ。黙って出てきてしまったが許して欲しい。緊急だったし、きみに危害が及ぶことは僕には耐えられない。その後も探していてくれてありがとう。これが最後になるかも知れないから、今までのことのお礼を言いたい。僕はとても幸せだった。みんなきみのお陰さ。いつも、いつもありがとう。僕はこれから遠くに行かなきゃならない。心配は要らないからもう探さないでくれ。でもきみに何かあればきっと駆けつけるよ。でも、今度はどんな姿で合えるかなー、僕だと分からないかもしれないね。おっと余計なおしゃべりが過ぎたようだ。もう行かなきゃ。体に気をつけて、長生きをしてくれ。それじゃーまた。」
 ロッキーが照れくさそうに、うつむいた。シャイな性格がうかがえる。
 ミナはここで録画を中止した。
 本題に入るからである。
 ここからがミナにとっての本当の仕事である。ロッキーは事も無げにいった。
 「もう思い残すことは何も無い。ボブより先に死ぬのは本意ではないが、一度死んだ身だ、ボブも分かってくれるだろう。ベン社の道具として利用されるぐらいなら、死を選ぶ。しかし悲しいかな、僕は自分では死ぬことが出来ない。ミナ、力を貸して欲しい。そしてこの体が再び誰かに利用されないように粉々に破壊してくれ。」
 予想通りの答えが返って来た。
 ビルとマイは、視線を落とした。何も言う言葉が見つからない。
 「あたし達の目的はあなた達が安全に暮らせるようにすること。どうすればそれが可能か?今模索しているところです。あたし達は諦めない。だからあなたも変な気を起こさないであたしたちを信じて。」
 ロッキーは驚いたような表情をした。
 そして深々と頭を下げた。
 ロッキーの最大級の感謝の気持ちの現れであった。
 「ミナ、分かった。元々失う物は何も無い。あなたに全てお任せする。いかなる結果が出ようと、受け入れよう。しかしボブの身にだけは危害が及ばぬよう気配りをお願いする。」
 ミナは大きく頷いた。
 「言われるまでも無いこと。彼はあたし達の依頼人です。依頼人を守るのがあたし達の仕事。」
 ミナはそう言いながら、ロッキーの首にチェーンの首飾りを装着した。
 「これはただの首飾りでは無いのよ、あたしの強い念が込められたチェーンで、様々な事が出来るのだけれど、一番は、あなたの居場所があたしに分かる事かしら。でもあたし以外の者にはこのチェーンは働かないから安心していいわ。それと連絡手段だけれど今から言う、ホットラインのアドレスにアクセスして、オペレータが用件を聞いてくるから、X101と言うと、あたしにつながるわ。自分を名乗る必要は無いわ。あなたの声紋はオペレータにインプットされていてアクセスした時点であなただと認識するから。登録していないと拒否するの。このオペレータはレベル5で国家機密並みのセキュリティーで守られているから傍受は不可能だけれど最低限の情報のやり取りにしましょう。」
 ロッキーはミナの言葉にあいづちをうって応えた。しかし、ふと思い返して話し始めた。
 「それは良いが、ボブとの契約が終了するから、活動費がどこからも出ないじゃないか。どうするんだ?」
 ロッキーは、しばらく考えていたが、ふと思いついた。
 「いい方法がある。一緒に持ち出したコンテナ一杯の武器を売れば相当な額になる。高価なものばかりだから、当面の活動費にはことかかないだろう。」
 ミナはもう十分な額をもらっていると言おうとしたがせっかくの申し出を受けないとロッキーの気がすまないだろうし、プロとしての在り方に関わるので了承した。
 「気を遣わなくったっていいのよ、でもあなたがそう言うなら、ありがたく使わせて貰うわ。どうせ被害届出なんか出せやしない品物ばかりでしょうからね。盗品ではないわね。では、契約成立ね。」
 ロッキーは、頭をひとつ下げた。
 了解したとの合図だ。
 ミナが快く受け取ってくれて律義なロッキーはホッとした。
 ミナ達にただ働きをさせる羽目に成る所だった。と思ったのだ。
 本当に律義な犬だ。
 ミナ達はその日、いつにも増して慎重の上にも慎重にロッキーと分かれた。
 何故ならしばらくはここにロッキーが潜伏することに決めたからである。
 ミナ達は帰り際にいくつものセンサーを仕掛け、侵入者を察知出来るようにして帰った。
 ロッキー自身もレーダ機能をもっているが、それにさえ引っかからないような者まで検出する為だ。
 異常があれば、ロッキーとミナ達全員に通報される。
 次の日、新しいカードフィルが加わった。
 依頼者は、ロッキー。そしてカードNOは、R101である。X101からの継続である。
 ミナは、カードX101の報告書を作成して、ボブにアポイントを取った。
 事情を聞いたボブはミナと会うことを了承した。
 約束の時間どおりボブの自宅に向かった。ミナが一人で行くことにした。
 ボブ邸に到着すると年老いてはいるが、かくしゃくとした紳士がにこやかに出迎えた。
 ボブは、玄関でミナを出迎えると。
 「ロッキーの件では色々と、お世話になっています。」
 そう言ってミナを応接間に通した。
 応接間を見回すとアンドロイドにされる前のロッキーと一緒に写った写真が幾つも壁に掛けられていた。
 どの写真も楽しそうで、幸せな二人が写っていた。
 この部屋に限らず、何処にいてもロッキーの写真があるに違いない。
 ミナは出された紅茶には手を付けず、話し出した。
 「詳しい事情はあなたの生命の危険を脅かす結果と成りますので、お答え出来ませんが、我々はこれからその時の映像をお見せします。一度切りですが、ロッキーとの接触に成功しました。ロッキーは元気でした。これからその時の映像をお見せします。ただし、一度切りです。この映像の存在自体が極めてあなたにとっても、ロッキーにとっても危険だからです。それではお見せします。」
 ミナは部屋中のカーテンを閉めシールドバリアを張り巡らして、一切の情報が漏れないようにした。
 そして、三次元映像を再生した。
 再生が開始されると、そこは、ロッキーのアジトの内部であった。
 そしてロッキーが浮かび上がった。まるでそこに居るかのような映像だった。
 背景には、極秘事項が含まれる為、ミナの脚色も多少はあったがボブにとっては、関係ない。
 これほど嬉しい知らせは無いのだ。
 ロッキーが話し始める前から目頭を押さえハンカチで涙をぬぐっていた。
 話し出せば、もう洪水だ。
 アンドロイドも泣くに嗚咽するのだ。人間より、人間らしい。それがこの時代のアンドロイドだ。
 ミナもあらためてまたあの日のことがよみがえって来た。
 もらい泣きするミナ。
 やっと話せるようになったボブはかすれ声で言った。