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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 「この剣の名前は、アカツキ。作者は名も無い刀工でジェフ・ジョナサン。超能力者である彼の願いは、美しい剣、持つだけで力がみなぎる強い剣、そして何者にも屈しない剣を造りたかった。彼は自分の命と引き換えにこの剣を生み出した。その到達した境地とは、すべての物事を受け入れて尚、不動の心を持ち、すべての力を解き放ち、無にかえす慈愛の心。生も死も融合させ、具現化させ剣は誕生した。」
 ロンは目を大きく見開いた。
 「なんだって?」と聞きなおした。
 ミナ本人も何を言ったのか理解出来ずにいる。
 「あたし今、何か言った?」
 と逆にロンに聞きなおした。
 ロンは記憶回路をリピート再生してミナの言葉を正確に復唱した。
 当のミナは「あたしがそんな訳の分らんことを言ったの?」と言って、それにしてもたいした刀だと、関心しきりである。
 「ロン、このアカツキは、とても多くの悲劇に彩られているわ。幾度となく本意でない使われ方をしてきたことも事実。マッドリターン・デボーも確かにこの剣の力で使えるけれど、それはこの剣の力のほんの一部でしかないわ。本当の真価は別にある気がするの?そう、それがなんなのかは、あたしには分からないのだけれど。」
 ロンはお世辞抜きにして驚かされた。誰もその正体すら知れない魔剣の正体と真髄を触れもせずに見抜くとは。
 恐るべき透視眼である。
 しかし、今のミナに必要な事は雲の上のおとぎ話ではない。
 立ち塞がるであろう敵を倒し、身を守るスベである。
 この非情の世界で耐え得るであろうか?ロンはその危惧を持って、バトルフィールドにミナは送り込むわけにはいかなかった。
 「我々は戦いの中に身を置き、相手を倒すことを目的に存在した。負けは死を意味するがそれは、任務の完了を意味するに過ぎない。人間が抱くような悲惨さや、悲哀と言う概念は我々には、存在しない。なぜなら敵も見方も同じ目的に向かって戦っている。優れた者、運の良かった者が、敗者の意思を引き継いでくれる。そこで自分自身の役割は終えるが、それは必要なことで、無駄ではない。貴重なサンプルなのだ。我々は一つのプロトタイプを構築する過程であると認識している。スリーオーワンは一つの答えではあるが、もちろん完璧を目指したものではない。最終形であるとは誰も思っていない。スリーオーワンでさえ、過程でしかない。ミナの敵はスリーオーワンとは、別のエリートクラスであり、またその中のスーパーエリート達だ。彼らは私利私欲、金や宗教、神の為や名誉、主義主張、理念、思想や理想、自己保持や家族愛や愛国心の為には戦わない。システムの維持強化を目的に作られたパーツだ。死を恐れる事は無い。純粋なるマシンだからだ。ガイヤ・マザーシステムにとっては、邪魔な障壁や有害なウイルスを消去する為に生み出された処方箋のようなものだろうがね。」
 「スーパーエリート?何か気分悪いわねー。虫が好かないわ。人を見下して、何様よーー。」
 そう言う問題では無いと思いますが?
 「彼らには善も悪も、その概念すら無い。任務を遂行するだけだ。ミナは彼らと戦うと言うが、彼らはマザーの意思の継承者。だから大天使と呼ばれ、気高く尊く美しい神獣だ。彼らと戦い、殺せるのか?神殺しの重罪を背負って生きて行けるのか?人間を殺すのとは訳が違うぞ!」
 ミナはロンの言葉の一語一句に全神経を傾けた。しかし微動だにする事無く、揺らがなかった。
 「デスプと一緒に夕日を追いかけた時、これら全てはマザーの贈り物だって聞かされた。デスプはこうも言った。マザーが偉大な神なら、俺たちはそれにタテツク悪魔ってとこかな?シッポは無いがなって。あたしはユリスと出会い、この道を自分で選んだ。ララに力の解放をお願いした時、約束をした。どんなに辛く苦しくても、やり遂げると。あたしだって善悪だけでは恐ろしくって戦えない。あたしが戦える理由は、それがあたしの行く道だから。ユリスが開いてくれたこの道、その先でユリスは苦しんでいる。あたしはユリスとも約束した。ユリスはもう忘れてしまって、気にもしてないけれど。でもあたしにとっては重要な事。ユリスがこの道の先、地獄に落ちて苦しんでいると言うのなら、あたしもそこへ行きましょう。堕天使にして大魔王ロン。あなたが言う地獄の扉を開いて下さい。あたしに迷いはありません。」
 『魔王ねーーー?懐かしいひびきだねー。何かのギャグだっけ?』
 ロンは古きしきたりのもと、敬意をはらった会釈をした。別に気取った訳じゃない。身に付いたものらしい。
 「その名で呼ばれるのは久しぶりだ。笑えるがね。そこまで言われちゃ仕方無い。心得た。御心のままにいたしましょう。」
 ロンはララに替ってもらいたいぐらいであった。
 無垢なる故の罪ならば、余りにその道は険しく、茨の道。この身を盾にできるなら、避けて通してやりたい。しかしその道はミナの道。それを代われる者は誰も無い。
 ロンはフン切りを付け、いつもの様におどけて微笑んだ。
 「さーミナ、武器は決まったか?持てるだけ持つといい。この倉庫を出たら戦闘開始だ。どちらかの生命反応が消えた時、現実の世界に戻って来るようプログラムされている。俺はお前の敵だ、お前の命を狙っている。やらねば、やられるぞーー。ためらう事無く、一撃でしとめるんだ。いいな。まず、最初は地上市街戦からいってみようーー。」
 実に軽いノリだ。
 ミナはやる気満々で武器を手にし、合図を待った。
 一発の銃声と共に地獄の門は開かれた。
 ロンは奥のドア、ミナは手前のドアから同時に外に飛び出し戦いは始まった。
 二人はジャンプして倉庫の上での銃撃戦を繰り広げた。
 横なぶりの雨のように降り注ぐ弾丸を潜り抜け、屋根から屋根に飛び移って行った。
 いつの間にか二人は市内の高層ビル街に戦場を移していた。
 ミナとロン以外の生命反応は無く、ここはまさしくゴーストタウンである。
 スカイトレインが現実社会と同時刻に通過して行ったが誰も乗っていなかった。
 体中に装着してあった弾を使い果たし、銃撃戦は二十分ほどで終了した。
 しかし勝負は付かなかった。この頃には二人ともやっとエンジンがかかってきた所で、ミナはブーメランカッターと言う持ち主に必ず戻ってくる手離剣のようなナイフを三六五枚装着して使っていた。分厚い装甲車のボディも切り刻む。そして戻って来る。
 その形状は、三日月の形をした手裏剣を装着する為の大きなホルダーが付いた銃である。
 ミナがこの武器を使えば、戦国時代の五万の兵士も十五分以内に全滅させられるであろう。
 あるときは空飛ぶ蛇、あるときは空を舞う殺人ツバメの大群と化す。
 ミナのサイコエナジーパワーが続く限り、無限に連射して撃つことが可能である。
 ロンはサイコエネルギーを破壊波に変え放つサイコビームと言う武器を使っていた。この武器もロンの力が続く限り連射して撃つことが可能である。この銃は、不気味の一言で言い表せる形をしている。
 そのパワーは桁外れだ。強弱の調整は自在だが、最も協力なレンジにセットすれば、戦艦の主砲並の威力を発揮する。